FDEは、AI時代の新しいエンジニアとして注目を集めている職種です。一方で近年急速に認知が広まったこともあり、どのような仕事なのか、将来性や年収はどの程度なのかは浸透しきっていないのが現状です。
興味があるものの、自分でも挑戦できるのか、将来性があるのかがわからず行動を起こせないという方も多いのではないでしょうか。本記事ではFDEとはどのような職種なのかに加え、仕事内容や求められるスキルをご紹介します。
求人動向や年収の目安、挑戦の判断基準も解説しているので、挑戦を考えている方はぜひ参考にしてください。
FDEとは?開発とビジネスの両方に踏み込むエンジニア
FDE(Forward Deployed Engineer)とは技術面だけでなく、ソフトウェアやAIの効果的な活用から、業務への定着や成果の創出までも支援するエンジニア職です。他職種とは異なり、顧客の組織や業務に入り込み、自発的な姿勢で支援するのが大きな特徴です。
データの統合・分析やAI運用を支援するアメリカの企業Palantir(パランティア)発祥の職種で、新しいエンジニアの形として近年注目を集めています。はじめに、FDEの概要と注目される背景をご紹介します。
SaaS・AI導入を成果につなげる仕事
ITツール、特にAIの導入は正確性の担保やガバナンス、法令などの要因により実現可能性の検証(PoC)を終えた段階で停滞しがちです。
実際、検証段階での有用性は確認できたものの、本番導入に踏み切れない組織も少なくありません。さらに、導入したものの、思うような効果を得られていない企業が多いのも実情です。このような課題の解決を支援する存在として、期待されているのがFDEです。
生成AIの普及と共に需要が増加
FDEはここ数年で、需要と募集が急増しています。その背景にあるのが、ビジネス領域への急速な生成AIの普及です。
加えて、既存システムや実務への組み込みに苦戦する企業が多いこともあり、実装から定着までを担うFDEの需要も増加しました。実際に、AnthropicやOpenAI、Googleといった海外の有名企業がFDEを積極に採用しているほか、国内でも求人が増加傾向にあります。
FDEとSES・SIer・ITコンサルの違い
FDEとSESやSIer、ITコンサルには、顧客との距離感や仕事内容に明確な違いがあります。
| 分類 | 概要 |
|---|---|
| FDE | 顧客の組織に入り込み、課題の整理から、開発、定着支援までを自発的に行う |
| SES | 顧客の組織に入り込み、システム開発や運用保守などの業務に技術力を提供する |
| SIer | 顧客の要望にあわせてシステムを構築する「受託開発」を手掛ける |
| ITコンサル | 顧客の課題を分析し、ITを使ってどう解決するかを提示する |
FDEは組織に入り込み、自発的に改革を進める存在です。一方のSESは顧客組織に入り込むものの、顧客が決めた仕様や担当範囲に沿って技術力を提供する点が異なります。
SIerは顧客の要望に沿ってシステム構築を手掛ける企業、ITコンサルは解決策のアドバイスを中心に行う職種です。いずれもソフトウェアやIT技術、AIを使って課題を解決する点は共通ですが、アウトプットの性質や顧客との関係性などは大きく異なります。
FDEの仕事内容
他の職種とは異なる性質を持つFDEですが、実際にはどのような業務を行うのでしょうか。以下では、FDEが手掛ける主な仕事をご紹介します。
顧客課題の発見と要件の整理
FDEが担当する業務のひとつが、ヒアリングや調査などによる課題の発見と、解決に向けた要件の整理です。現場の担当者はもちろん、責任者や経営層にもヒアリングを行い、現状の課題や業務の流れをしっかりと把握します。
その上で、解決すべき課題と優先順位を決定。そこから、企業のコンプライアンス・インフラ要件を踏まえつつ、解決手段に求められる要素を整理します。
システム連携とワークフローの実装
解決手段の要件を整理したら、それを実現するためのシステム連携と顧客向けソリューションの開発を実施します。ここでは、既存システムの全体像やデータ環境を踏まえた効率的なデータフローの設計、要件を満たすための機能実装を行います。
SaaSやAIの活用を前提としたワークフローの設計と実装も、FDEの仕事です。その組織の承認フローや業務、遵守すべき法令などに沿った設計を行い、業務プロセスの変革を推し進めます。
本番導入と定着の支援
システムの本番導入もFDEの業務のひとつです。この仕事では事前に設計しておいたシステムやワークフローを、実際の業務で使える状態にします。
一方で、FDEの仕事は導入までで終わりではありません。現場の従業員が問題なく使いこなせるか、業務改善につながっているかを確認し、必要に応じてルールの整備や教育を行います。
フィードバック・改善点をプロダクトへ反映
システムやワークフローの運用では、本番導入後に新たな課題が発見されることも少なくありません。思ったような効率化につながらなかった、利用が形骸化している機能が見つかったなど、生じる課題は現場ごとにさまざまです。
このような課題をヒアリングや調査により発見し、その改善案を顧客に提供中のプロダクトへ反映することもFDEの仕事です。また、個別の顧客を支援する中で得た知見を自社に共有し、今後の開発や自社製品の改善につなげる役割も担っています。
なお、AI分野におけるFDEの役割については、以下の記事で詳しく解説しているので、役割について掘り下げたい方はぜひご覧ください。
⇒ FDEはAI分野で何をする?役割や注目される理由・将来性を解説
FDEに求められるスキル
FDEには、顧客を課題解決に導くための様々なスキルが求められます。ここからは、FDEに求められるスキルについてご紹介します。
エンジニアリングスキルとIT・AIツールへの理解
FDEには、課題解決の手段や構想を形にするための開発力と技術力が不可欠です。解決手段の設計から実装まで幅広く手掛けるため、フロントエンドやバックエンドはもちろん、データ構造やインフラに関するスキルも求められます。
また、顧客に対して最適な提案をしたり、漏えいリスクを抑えた運用を実現したりするためには、ITやAIツールへの深い理解が重要です。新しい機能やツールを適宜キャッチアップし、提案に活かすことも欠かせません。
顧客のニーズを的確に汲み取るコミュニケーション力
顧客のニーズを聞き出し、そしてその意図をしっかりと汲み取るコミュニケーション力も重要です。多くの現場では、自らの課題を明確に言語化できていなかったり、そもそも認識できていなかったりする場合も少なくありません。
成果につながる提案をするためには、現場での何気ない作業の観察や対話から、解決すべき課題を見つけ出すスキルが必要です。加えて、経営層と従業員の両方と円滑にコミュニケーションを取り、スムーズな合意形成につなげる力も求められます。
課題を整理し、解決の道筋を立てる思考力
FDEには解決すべき課題を見極めたうえで優先順位を設定し、打ち手を設計する思考力も必要です。多くの企業は、非効率な承認フローやアナログ作業、従業員の負担となるルール、属人化など多様な問題を抱えています。
しかし、リソースには限りがあるため、解決によって費用対効果や生産性の向上が見込める課題を見極め、優先順位を付けるスキルが不可欠です。さらに、優先順位を踏まえ、解決につながるロードマップを設計できれば、より円滑な支援につながります。
改善を重ねながら成果に導く推進力
SaaSやAIを本番導入するだけでは、課題解決に至らないことも少なくありません。運用の中で課題が出てくることも多いため、顧客向けソリューションやワークフロー、ルールの継続的な改善が不可欠です。
この改善プロセスで必要となるのが、正解が示されない状況でも粘り強く施策を推進し、成果につなげる力です。また、仮説の検証を素早く繰り返す実行力、プロトタイプをスピーディーに形にする力なども求められます。
FDEの将来性は?AIの進化でなくなる仕事なのか
SaaSやAIを成果につなげるFDEの需要は、年々増加傾向にあります。将来性についてはAIの進化の方向性によるものの、技術と現場の橋渡しを担う仕事のため、役割を変えながらも残ることが予想されます。
一方で、仕事内容や役割の変化は激しいようです。OpenAIでFDE部門のグローバル責任者を務めるColin Jarvis氏も、FDEの仕事内容や役割は半年単位で変化する可能性があるとの見方を示しています。
顧客の課題を解決し、成果に導くという本質は変化しないものの、具体的な仕事内容や求められるスキルが変わりやすい点は留意しておきましょう。
参考:ITmedia AI+|OpenAIが明かす、新職種「FDE」の実態 半年で様変わり、「仕事の7割が消滅」したことも
日本におけるFDEの年収目安と求人状況
FDEの採用は、国内の先端SaaSやAI関連企業において始まっています。また、OpenAIやGoogle、Notionの国内拠点でも募集されています。しかし、比較的新しい職種であり、日本では普及段階のため、募集している企業や求人数は海外ほど多くはありません。
年収については、企業や経験によって異なり、経験者を対象とする求人では年収600万~1,500万円程度ほどの水準が提示されています。FDEを目指すうえで入口となりうる企業では、300万~600万円ほどがひとつの目安となります。
より詳細な年収について知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
→ FDEの年収はいくら?国内・海外の相場や高年収の理由を解説
未経験・新卒でも挑戦できる?
多くのFDE求人では、数年以上の開発実績が必須要件とされています。一方、コンサルティングの経験は歓迎要件とされるケースが多いため、未経験から挑戦するならエンジニアとして経験を積むことが第一歩です。
また、本番環境レベルのAIソリューションの開発や、顧客との対話を経た開発・実装などの実績が要件として定められているケースも少なくありません。FDEへの挑戦を検討しているなら、AI関連製品の開発や顧客との要件整理なども経験できる場所で実務経験を積みましょう。
FDEに挑戦すべきか迷ったときの判断基準
FDEに興味はあるものの、自身がやっていけるのか、挑戦できるのか不安に思っているという方も多いでしょう。 最後に、FDEに挑戦すべきか迷ったときに、ぜひ参考にしてほしい判断基準をご紹介します。
顧客と伴走することに抵抗がないか
FDEは、顧客の組織の内部に入り込み、コミュニケーションを重ねながら支援する仕事です。そのため、顧客との日常的なコミュニケーションが負担にならないか、相手方に入って信頼関係を築くのが得意かどうかは確認しておきましょう。
仮に1人で黙々と作業をするのが好きだったり、顧客との調整よりも開発を優先したいタイプだったりすると、ストレスを感じるかもしれません。一方で、自発的に行動でき、親身になって課題解決までを支援できるタイプであれば、FDEに向いている可能性があります。
今の実務経験が活かせるか
今の実務経験が活かせるか、募集要件を満たしているかも重要なポイントです。FDEの求人要件では、一定以上の開発経験が明記されているため、今までの実務経験が挑戦のハードルを大きく左右します。
仮に募集要件に満たない場合は、数年以上の開発実績を積む必要があるため、挑戦までに想像以上の時間がかかってしまうでしょう。なお、すでに必須要件をクリアしており、推奨要件もいくつか満たせているなら、挑戦する価値は十分にあります。
学習にあてる時間と費用を継続的に確保できるか
FDEはエンジニア職であるものの、コンサルティングのスキルも欠かせません。もし開発中心のキャリアであった場合、コンサルティング領域の学習が必要になります。
また、AIの進化は目まぐるしく、機能や性能も日々変化します。これまでのやり方が数ヶ月で古くなったり、新機能により業務の構造が変わったりすることも少なくありません。FDEに挑戦したい、働き続けたいと考えているなら、情報収集と学習を継続するための時間と費用を確保できそうかは必ず把握しておきましょう。
技術と人の両方に向き合えるなら、FDEは有力なキャリアの選択肢になる
FDEは開発力に加え、コミュニケーションとコンサルティングのスキルが求められる職種です。挑戦のハードルはやや高いものの、SaaSやAI活用に悩む企業の課題解決を内側から支援する、とてもやりがいのある仕事です。
技術と人の両方に向き合え、新しい技術も楽しみながら学べるタイプなら有力な選択肢となるでしょう。挑戦を迷っているなら、コミュニケーションへの考え方やご自身の経験、学習習慣などを整理してみることからはじめるのもおすすめです。
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