「データサイエンティストはやめとけ」——キャリアを考えて調べ始めた矢先に、こうした言葉を目にして不安になった方もいるのではないでしょうか。
高い専門性が身につき、将来性もある職種だと言われる一方で、「つらい」「後悔する」といった声も少なくありません。どちらが実態なのか判断できないまま、一歩を踏み出せずにいる方も多いはずです。
この記事では、データサイエンティストが「やめとけ」と言われる理由とその真相を解説します。あわせて、「やめとけ」と言われる要因を職種そのものに由来するものと働く環境に由来するものに切り分け、入社前に環境を見極める方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
・データサイエンティストが「やめとけ」と言われる5つの理由と、その実態
・その「やめとけ」が職種の問題なのか、環境の問題なのか
・求人票や面接で「やめとけ」な環境を見極める方法
・データサイエンティストとして活躍できる人の特徴
データサイエンティストは、やめとけと言われるような職種ではない
結論から言うと、データサイエンティストは「やめとけ」と敬遠されるような職種ではありません。
どのような仕事にも共通することですが、その職種が自分に向いているか、力を発揮できるかは、あくまで適性によります。そしてデータサイエンティストの場合は、それに加えて「どのような環境で働くか」によっても、仕事の手応えが大きく変わります。
インターネット上で見かける「やめとけ」という声には、職種そのものの特性を語っているものと、たまたま恵まれなかった環境の話が混ざっています。この2つを切り分けて見ることが、判断の第一歩になります。
そのうえで、仕事内容や求められる知識・スキルをしっかり把握し、「自分に合っている」と感じられるようであれば、将来性のある職種として目指す価値があるといえるでしょう。
そもそもデータサイエンティストとは?
データサイエンティストとは、企業の内外に蓄積されたデータを活用し、収集・分析を通じて課題解決や意思決定をサポートする専門職です。自社やクライアントのビジネスに貢献することを目的に、データから有用な示唆を導き出し、実行可能な提案へとつなげます。
一般社団法人データサイエンティスト協会では、データサイエンティストを「高度に情報化された社会において、日々複雑化及び増大化(ビッグデータ化)するデータを、利用者の利用目的に応じて情報を収集・分析する技術を有し、ビジネスにおいて実行可能な情報を作ることができる者」と定義しています。
データの収集・分析・管理などに携わる職種としてほかに挙げられるのは、データアナリストやデータエンジニア、AIエンジニアなどです。それぞれの職種の主な仕事内容は下記のとおりです。
<データ業務に関わる職種の主な仕事内容>
- データアナリスト:データを分析・可視化し、示唆の提供やプレゼンテーションを行う
- データエンジニア:データの収集・蓄積・加工のための基盤を構築し、活用環境を整備する
- AIエンジニア:AI技術を活用し、機械学習モデルの設計・構築・運用や、学習データの解準備・処理を通じてAIソリューションを提供する
これらの職種がそれぞれの専門性を活かす中で、データサイエンティストは、分析領域全体を横断的に担いながら、他職種と連携してビジネス課題の解決や新たな価値の創出につなげていく存在です。
仕事内容や求められるスキルについては、こちらで詳しく解説しています。
→ データサイエンティストとは?仕事内容や求められるスキルを解説
データサイエンティストはやめとけと言われる理由

データサイエンティストは企業において重要な役割を担い、目指す価値のある職種です。では、なぜインターネット上などで、データサイエンティストは「やめとけ」といった声が聞かれるのでしょうか。ここでは、その主な理由をご紹介します。
重要な判断を任せられる場面が多い
データサイエンティストは、企業の意思決定に直結する分析結果を提供するという、責任の重い役割を担っています。自身の分析が、経営戦略や新規事業の方向性、マーケティング施策に大きな影響を与えるケースも少なくありません。そのため、重要な判断を委ねられるプレッシャーを感じやすい職種でもあります。
実務では、分析そのものよりも「その数字をどう解釈し、どう伝えるか」に神経を使う場面が多くなります。同じ結果でも、伝え方ひとつで意思決定の方向が変わることがあるためです。
データサイエンティストの仕事は数字がすべてと誤解されがちですが、実際には現場の状況やビジネスの背景を理解し、企業内の各部門とすり合わせを重ねながら、アクションにつながる分析結果を導く視点と調整力が求められます。
一方で、その責任の重さゆえに、的確な分析で意思決定を支援できれば高く評価されるという側面もあります。一般的に、データサイエンティストの給与水準が高いとされるのは、このような価値の高い業務を担っているためです。
幅広い知識や高度なスキルが求められる
データサイエンティストには、多岐にわたる知識やスキルセットが求められることも、「やめとけ」と言われる理由のひとつです。具体的には、数学や統計学、プログラミング、機械学習、データベースといった領域の知識が必要となり、学ぶべき範囲の広さに難しさを感じる人も少なくありません。
加えて、技術面のスキルだけではなく、ビジネス視点も不可欠です。分析結果をビジネス課題と結び付け、意思決定を支援する力が求められます。そのためには、顧客や社内の関係者に対して分析結果をわかりやすく伝え、行動につなげるコミュニケーション力も重要です。
さらに、学んだ手法をそのまま当てはめられる案件は多くありません。データの状態や現場の制約に合わせて、手持ちの知識を組み替えながら進めることがほとんどです。知識を「持っていること」より「使い分けられること」が問われる点に、難しさを感じる方もいるでしょう。
「分析はできるものの、それをどう活かせばいいかわからない」と感じる人にとっては、データサイエンティストとして価値を発揮しにくい可能性もあります。このように、必要なスキルが幅広く高度であることから、「誰にでも目指せる職種ではない」という声があるのかもしれません。
コツコツとした地道な作業が多い
データサイエンティストは、華やかなイメージを持たれがちですが、実際の業務ではデータの前処理や整備といった地道な作業が多くを占めます。例えば、欠損値の処理やデータの結合、特徴量(対象データの特徴を定量的な数値で表したもの)の作成など、分析前の準備に多くの時間を費やすことが一般的です。
実際、モデルを設計している時間よりも、表記のゆれを整えたり、欠損値をどう扱うか判断したりしている時間のほうが長い、というのは現場でよく聞かれる話です。
こうした作業を地道に進めることが苦にならず、細かなチェックや試行錯誤を楽しめるタイプでなければ、長く続けるのは難しい仕事ともいえるでしょう。
学び続けなければならない
データ分析の領域は技術の移り変わりが早く、数年前に主流だった手法が現在では標準的でなくなることも珍しくありません。生成AIの登場以降は、その変化の速度がさらに増しています。
資格を取得すれば終わり、という職種ではないため、「一度スキルを身につけて落ち着きたい」と考える方には、負担に感じられるかもしれません。
ただし、学び続けることがそのまま市場価値の維持につながる職種でもあります。負担の大きさは個人の意欲だけで決まるものではなく、業務時間内に学習の時間を確保できるか、研修や勉強会の制度があるかといった環境にも左右されます。
AIに取って代わられる可能性がある
AIが進化するにつれて、将来的にデータサイエンティストの業務がAIに代替される可能性があるといった懸念もあります。実際、機械学習モデルを活用した自動分析やデータ処理の自動化は、すでに実務で導入が進んでいます。
とはいえ、顧客が言語化できていない要望を引き出し、調整を重ねながら課題を特定するプロセスは、現時点のAIには難しい領域です。「何を分析すればビジネスに役立つのか」「どのように活用すれば現場が動くのか」といったビジネス視点での判断や調整力を備えたデータサイエンティストは、今後むしろ人材価値が高まっていく可能性があります。
データサイエンティストの将来性については、こちらで詳しく解説しています。
→データサイエンティストはなくなる?その理由や将来性を解説
その「やめとけ」は職種の問題か、環境の問題か
データサイエンティストについて語られる「やめとけ」には、性質の異なる2種類が混ざっています。
ひとつは、どの会社で働いても変わらない、職種そのものの特性です。前処理の地道さや、学び続ける必要性は、勤務先を変えても基本的についてまわります。
もうひとつは、配属された環境によって大きく変わるものです。同じデータサイエンティストという肩書きでも、環境が違えば仕事の手応えはまったく別のものになります。そして「やめとけ」という声の中には、後者を職種そのものの問題として語っているケースが少なくありません。
ここでは、環境によって変わる代表的な3つを取り上げます。
分析結果が意思決定に使われない
データサイエンティストの仕事は、精度の高い分析をすることだと思われがちです。
しかし実際の現場では、時間をかけてレポートを提出しても、意思決定は従来どおりの経験と勘で進んでいくという状況が起こります。分析の内容に問題があるわけではなく、データを判断材料として扱う習慣が組織にまだない、というケースです。
自分の仕事が何にもつながらない感覚は、想像以上に消耗します。ただしこれは分析力の不足ではなく、分析結果を意思決定に組み込む仕組みが整っているかどうかの問題です。
一人で任され、相談できる相手がいない
データ分析の担当者が社内に一人だけ、という体制は珍しくありません。
一人であれば裁量は大きくなりますが、同時に、分析の妥当性を確認してくれる相手がいない状態でもあります。この判断で合っているのかを誰にも聞けないまま進める状況が続けば、精神的な負担は大きくなります。
これも職種の性質というより、チーム体制の問題です。同じ職種でも、互いにレビューし合える体制があるかどうかで、日々の働き方は大きく変わります。
求められる役割が曖昧なまま任される
「データを活用して何とかしてほしい」という漠然とした依頼だけが来て、何をゴールとするかが決まっていない——こうした状況もよく聞かれます。
期待されている成果が曖昧なままでは、どれだけ丁寧に分析しても評価にはつながりません。逆に、解くべき課題が明確な環境であれば、同じスキルでも成果が正当に評価されます。
このように、「やめとけ」と言われる要因のうち、少なくない部分は職種そのものではなく環境に起因しています。避けるべきなのはデータサイエンティストという職種ではなく、こうした環境のほうだといえるでしょう。
「やめとけ」な環境を見極める方法——求人・面接で確認したいこと
環境によって働き方が変わるのであれば、入社前にその環境を見極められれば、「やめとけ」と言われる状況の多くは避けられます。ここでは、求人票と面接で確認したい点を整理します。
求人票で確認したいこと
● 分析を担当するチームがあるか。「一人目の分析担当」「兼任」といった記載がある場合は、体制について面接で確認しておきたいところです
● 業務内容に、課題設定や提案までが含まれているか。決められた集計作業だけが切り出されていないかを見ます
● 扱うデータや分析環境について、具体的な記載があるか。抽象的な表現に終始している場合は、社内でのデータ活用がまだ進んでいない可能性があります
● 研修や勉強会、資格取得の支援など、学習を支える制度があるか
面接で確認したいこと
面接では、次のような質問をしてみると、環境の実態が見えやすくなります。
● 分析結果は、どのように意思決定に使われていますか
● 直近で、分析をきっかけに何かが変わった事例はありますか
● 分析チームは何名体制で、どのようにレビューをしていますか
● 入社後、最初に取り組むテーマは決まっていますか
ここまでの内容を、環境の特徴として整理すると次のようになります。
| 避けたい環境 | 望ましい環境 |
|---|---|
| 分析の目的が「データ活用の推進」など漠然としている | 解くべき課題が具体的に示されている |
| 分析担当が一人だけで、レビューし合う相手がいない | 複数名の体制があり、相談やレビューができる |
| 分析が実際に活用された事例が出てこない | 分析をもとに意思決定が変わった事例を具体的に話せる |
| 学習は業務時間外の自助努力とされている | 研修や勉強会など、学びを支える仕組みがある |
これらは特別な質問ではなく、入社後の働き方を具体的にイメージするための確認です。答えに詰まるようであれば、その組織ではデータ活用がまだ定着していない可能性があります。逆に、具体的な事例がすぐに出てくる環境であれば、分析が意思決定に組み込まれていると考えてよいでしょう。
データサイエンティストの魅力
ここまで見てきたとおり、データサイエンティストは将来性のある仕事です。では、データサイエンティストの仕事の魅力は、どのような点にあるのでしょうか。ここでは、代表的な4つの魅力をご紹介します。
市場価値の高い人材になれる
幅広い分野でデータ活用が進む現代において、多くの企業がデータサイエンティストを求めており、その需要は今後もいっそう高まっていくと見込まれています。
データサイエンティストはIT業界に限らず、金融や製造、小売、医療など、業界を問わず活躍できる職種です。データ分析やAI技術を扱える専門人材は依然として少なく、専門知識を身につけることで、人材市場における競争力を大きく高めることが可能です。
ITスキルやビジネススキルが磨ける
データ分析や機械学習の実装を通じて、PythonやSQLといった実践的なITスキルを身につけられる点も魅力です。また、ビジネス課題をデータで解決するプロセスを経験する中で、論理的思考力や課題解決力にいっそう磨きがかかるでしょう。
さらに、分析結果をもとに経営層や現場と議論する機会が多く、その中でデータを活用した意思決定スキルも向上していきます。
会社の課題解決につながる仕事ができる
データサイエンティストは、売上向上やコスト削減といった企業の具体的な課題を、データ分析によって解決する役割を担います。あらかじめ決められた要件をこなすのではなく、データから新たな発見や気づきを導き出す仕事です。
課題解決のアプローチをみずから考え、仮説検証を繰り返す中で、創造的な問題解決力が養われる仕事といえるでしょう。
活躍すれば年収アップを実現できる
データ活用スキルの需要が急速に高まる一方で、人材の供給が追いついていないことから、データサイエンティストは多くの企業で評価されやすい傾向があります。そのため、実務経験を積み市場価値が高まれば、将来的に高収入を得ることも可能です。
特に、AIやデータ分析に関するスキルを備えた人材は需要が高く、転職市場でも有利に働くケースが多いと考えられます。
また、データサイエンティストの仕事は独立やフリーランスといった働き方も視野に入れることができ、スキル次第で高単価の案件を獲得できるチャンスも広がるでしょう。
データサイエンティストとして活躍できる人の特徴
データサイエンティストとして活躍できる可能性が高い人には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは代表的なものをご紹介します。なお、向いている人・向いていない人の特徴をより詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
→データサイエンティストに向いている人とは?転職するメリットも解説
データ分析や数字が好き
物事を論理的に整理し、データをもとに分析することが得意または楽しいと感じる人は、データサイエンティストに向いています。数学の知識は必要ですが、数値を扱うことに抵抗がなければ、文系・理系を問わず挑戦可能です。
統計データやビジネス指標の変化を観察し、仮説を立てて改善策を考えることにやりがいを感じる人には、特に適した職種といえるでしょう。
地道な作業も含めて楽しめる
実務では、データの前処理やクレンジングといった細かな作業が多く発生します。予想外のデータやノイズを見つけ、地道に修正や調整を重ねながら、精度の高い分析を目指す粘り強さが求められる職種です。
こうした作業をコツコツと積み重ねることにやりがいを感じられる方は、データサイエンティストとしての素質があるといえるでしょう。
コミュニケーションが得意
相手が言語化できていない本質的な課題を引き出せるようなコミュニケーション力を持つ方は、データサイエンティストに向いています。ここで求められるのは、場を盛り上げるスキルではなく、ビジネス現場の課題を正しく理解し、データをどう活用すれば役立つのかをいっしょに考えられる力です。
そのためには、相手の言葉を丁寧に聞く傾聴力や、考えを整理して言語化する力が重要になります。
論理的思考で考えられる
データサイエンティストは、感覚や経験則に頼らず、データを根拠に仮説を立て、論理的に結論を導き出す力が求められる職種です。また、物事を細かな単位に分解して整理し、相手にわかりやすく伝える際にも論理的思考力が不可欠です。
さらに、単に分析結果を示すだけでなく、それをどのようにビジネスに活かすかを考え、再現性のある解決策を導く力が重要です。こうした力を備えている方は、データサイエンティストとして高い価値を発揮できるでしょう。
なお、未経験からの転職を考えている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
→30代未経験からデータサイエンティストに転職可能?仕事内容も解説
データサイエンティストとしてキャリアアップを目指すなら分析屋がおすすめ
データサイエンティストは重要な判断を任される場面が多く、求められる知識やスキルの水準も高いことから、ネガティブに語られるケースもある職種です。しかしその「やめとけ」の多くは、職種そのものではなく、分析が活かされない環境から生まれています。
裏を返せば、分析結果が意思決定に使われ、相談できる仲間がいて、学び続けられる環境を選ぶことができれば、データサイエンティストは長く力を発揮できる仕事だといえます。
分析屋では、高度な分析スキルはもちろんのこと、ビジネス視点やコミュニケーション力を備えた、市場価値の高い人材へと成長できる環境を整えています。顧客の意思決定を支援する「おもてなしの精神」を大切にし、データを活用した本質的な課題解決に取り組むことが可能です。
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