
近年、「働き方改革」や「DX推進」というキーワードが浸透する中、RPAの導入を進める企業が増えています。手間のかかる定型業務を自動化することで、企業の業務効率を向上できると言われていますが、実際のところどのようなツールなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、RPAでできることや導入するメリット、RPAに適する業務の例など、RPAの基礎知識について分かりやすく紹介します。
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン業務を自動化できるソフトウェアロボットのことです。マウス操作やキーボード入力などの操作手順を記録し、RPAがその通りの処理を実行することで業務の自動化を実現します。
RPAの特徴
ひとくちに「自動化」といっても、RPAが自動化できるのは人がパソコンを使用して行う事務作業に限ります。また、業務フローや作業手順が決まっている定型業務の自動化を得意としています。PCでの事務作業のうち定型的な部分をロボットに代行してもらい業務の効率化を図ることが、RPAの基本的な役割と言えます。
またプログラミング知識がない人でも業務の自動化を実現できることも、RPAの特徴のひとつです。非エンジニア人材でも簡単に業務を自動化することができます。
RPAの使い方
RPAは、業務手順をRPA用のフローチャートやリストに落とし込み、RPAソフトがそれを実行することで自動処理が行える仕組みになっています。このフローチャートやリストのことを「シナリオ」と呼びます。RPAソフトウェア上で、シナリオの作成・実行・管理を行うことができます。

https://winactor.biz/rpa/winactor.html

RPAシナリオの作成
シナリオの作成方法について、ここでは代表的な2つの方法をご紹介します。
1つ目は、手作業で作成する方法です。RPAソフト内で図形をひとつひとつドラッグアンドドロップしたり、手順を箇条書きにしたりして組み立てていきます。
2つ目は、レコーディング機能で作成する方法です。人による実際の画面操作を記録し自動でシナリオを作成する方法です。Excelマクロをよく利用する方は「マクロの記録」機能をイメージしてもらえると良いかもしれません。自動で作成できるのは便利な反面、すべてを完璧に作成することは難しく、手動による設定が必要になることもあるようです。
RPAシナリオの実行
作成したシナリオを実行し、対象作業の自動処理をスタートさせます。
製品によって様々な機能がありますが、シナリオ実行の時刻指定やその他条件をキーにしてスタートさせることもできます。
RPAロボットの管理
RPAの活用が広がりシナリオや担当者が増えてくると、RPAに起因するトラブルが起こりやすくなります。
例えば、所有者や実態が不明で管理不能な「野良ロボット」の発生が挙げられます。他にも、同じような処理をするシナリオが担当者ごとに重複して存在したり、セキュリティ的に不安のある動作をするシナリオが生まれたり、様々なケースが起こり得ます。
このような事態を防ぐため、多くのRPA製品ではシナリオ管理機能を備えています。管理機能によって、シナリオの所有者・実行者の管理や実行ログの作成などを行うことができます。
RPAでできること
RPA導入によってどのようなことができるのでしょうか。RPAでの自動化に向いている業務を紹介します。
ルールが明確な定型業務
RPAが得意としているのは、業務手順や作業フローが固まっている定型業務を自動化することです。すでに手順書が存在している業務は、特にRPAに置き換えやすいと言えます。
また作業頻度が多い業務や日次・月次のように定期的に繰り返し行う業務も、自動化することで大きな効果が得られます。
複数アプリケーションをまたぐ業務
一つの業務内で複数のアプリケーションを使用するような場合でも問題ありません。
例えばExcelで集計管理しているデータを社内システムに登録するというような作業があったとします。「Excelの特定のセルから値を取得し、社内システムにログイン後、社内システムの所定の入力フィールドに入力して登録ボタンを押す」というような内容のRPAロボットを作成することで、一連の処理を自動で行うことができます。
業務にかかる時間を短縮
RPAで自動化することによって、ひとつの業務にかかる時間を大幅に短縮することができます。
同じ作業をするにしても、人が手作業で行う場合とRPAが行う場合では処理スピードに大きな差があります。
またRPAであれば実行時刻を指定することもできます。そのため、夜間や昼休みの時間などの社員が働いてない時間を有効活用することが可能です。
データベースでできないこと
RPAによって業務を大幅に効率化できるものの、万能ではありません。RPAには向いていないことを紹介します。
臨機応変な対応や例外処理
人による判断が必要な業務は、RPAには向いていません。
RPAは作成されたシナリオ通りの動作しかできないため例外処理や可変的な状況に弱く、そのような場面に遭遇すると停止してしまいます。判断を定量化もしくはパターン化できる場合でのみ、分岐処理を組み込むなどしてシナリオを作成することができます。
多くの人を介する業務
複数人による作業が必要とされる業務は、自動化する際に注意が必要です。
例えば、複数部署での記入を必要とする書類の作成、承認が下りないと次の手順に進めない業務などです。業務フローの中に人にしかできない作業が含まれている場合、シナリオをそこで中断させなければなりません。
業務のどの部分をRPAに置き換えれば効果的か、見極めが必要です。
短時間で完了する業務
1工程しかない等の単純すぎる業務や、手作業で行っても時間がかからない業務の自動化には向いていません。
シナリオ開発にかかるコストと自動化によって削減できるコストを比較し、より効果の高い業務からRPA化していくことおすすめします。
RPAに適した業務の例
RPAは多岐にわたる業務で活用することができます。
ここでは、RPAによる自動化が望める業務例を業種別にご紹介します。
経理・財務 | ・請求書処理 ・請求書と入金データの自動照合 ・月次報告書の作成 |
製造 | ・在庫管理のレポート作成 ・購買・調達管理の事務処理 ・製造日報の集計 |
総務 | ・勤怠管理 ・交通費精算 ・従業員管理 |
営業・マーケティング | ・WEB検索での定期的な市場調査 ・CRMへの顧客情報入力 ・見積書作成 |
IT | ・システム運用 ・アラート管理 |
RPAを導入するメリット
コスト削減
人件費をはじめとしたコストの削減を実現することができます。担当者は、単純だが時間がかかっている作業をRPAに任せ、その作業に費やしていた時間を他の業務に回すことができます。人が行うべき業務とRPAが行う業務を区別することで、生産性の向上にもつなげることができます。
ミスの削減
入力ミス、作業間違いなどのヒューマンエラーを削減することができます。単純な作業であっても、人が行えばミスは付きものです。ミス発生防止のための職場内の各種対策が、かえって業務を増やしてしまっていることも多々あります。RPA化しロボットによる自動処理に置き換えることで、業務品質の向上も期待できます。
業務の省力化
ひとつの業務にかかる労力を省力化することができます。人の作業スピードとRPA処理のスピードでは圧倒的な差があります。RPAを導入することで、何週間もかかっていた業務を数日で完了することができるかもしれません。作業を高速で完了させることで業務スピードの向上が見込めます。
働き方改革の推進
人材不足や働き方改革によって人々の働き方は大きく変革していますが、RPAは24時間365日稼働することができます。またRPAに置き換えられる業務であれば、人が働いていない時間帯に終わらせてしまうことも可能です。うまく活用することで、働き方改革をさらに推し進めることができます。
類似ツールとの比較
「自動化」というと、RPAやVBA、AIが混同してしまう方も多いのではないでしょうか。
ここでは、VBAやAIとの違いについて解説します。
VBAとの違い

すでにVBA(Excelマクロ)を使用して業務の自動化を行ったことがあるという方は、比較的多いのではないでしょうか。
RPAとVBAの決定的な違いは、自動化できる対象範囲です。VBAは自動化できる対象がoffice製品に限られているのに対して、RPAは人がPC画面で操作できるもの全てを対象としています。
改めて整理すると、VBAとはMicrosoft Office製品の操作を自動化するためのプログラミング言語のことです。一般的にはExcelの拡張機能として、Excelでの入力・集計作業を高速で自動処理したい場合に使用されています。
AIとの違い

RPAとAIは、「自動化」という点では少し似ていますが、できることに大きな違いがあります。AI(人工知能)は学習能力や推論能力を持ち、より複雑なタスクや意思決定をすることができます。一方でRPAはあらかじめ定められた通りの動作しかできません。シナリオに組み込まれていないケースに遭遇した場合、エラー判定となり動作が停止してしまいます。
RPAとAIを組み合わせた活用
RPAとAIではできることが異なる点を利用し、両者を組み合わせることで自動化の幅を大きく広げることが可能です。
例えば、紙に書かれた文字を画像で読み取りテキストデータ化するAI-OCRという技術があります。AI-OCRはOCR(光学文字認識)にAI(人工知能)を組み込んだことで、読み取りづらい文字でもより正確にテキストデータ化できるようになりました。
RPAで業務を自動化する際に大きな障壁となるのが、業務内にデータ化されていない資料が含まれている場合です。紙に書かれている文字をパソコンに入力する作業は簡単な作業に思えますが、決められた動作しかできないRPAには対応できません。しかしRPAとAI-OCRを組み合わせて使用すれば、その作業も含めて自動化することができます。
RPA活用事例
事例1:ECモールから受注データや在庫データのダウンロード業務を自動化
業種:小売業/部門:営業部門
ファッション通販サイトを運営する大手企業の営業部門での事例です。ECモールサイトから受注データ・在庫データを毎朝ダウンロードする作業がありました。作業自体は短時間で終わるものの、土日の販売数が多いことから月曜朝の負担が最も大きく、毎朝行わなければならないという業務特性が社員の負担となっていました。
365日 / 毎朝8時に稼働するようRPAで自動化することで、慌ただしい朝の業務を省力化することに成功しました。
参考:【導入事例】WebEDIの面倒な手作業をRPA+標準化スクリプトで即自動化
事例2:金融機関における情報収集業務・集計業務を自動化
業種:金融業/部門:各部門
こちらの金融機関では、2017年に「2019年度末までの3カ年で500億円、中期的に1,000億円のコスト削減」という目標を掲げ、その施策としてRPAツールの導入を行いました。
従業員向けのRPA研修を充実させるなど、従業員が主体的に業務効率化に取り組める体制を整えたことも功を成し、3か年で350万時間、1750人相当の業務量をRPAによって削減することができました。
参考:(コラム)業務改革を通じたコストコントロールと生産性向上:SMBCグループ二十年史
事例3:高度なAI-OCRサービスとRPAの連携により特別定額給付金の支給を最短4日で実現
業種:公務/部門:福祉課
新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令された際、家計への支援策として特別給付金の給付が行われました。その正確かつ迅速な給付手続きを行うため、こちらの自治体ではAI-OCRとRPAを導入し業務自動化を図りました。
手書きの申請書をAI-OCRでテキストデータ化し、RPAで給付金システムにデータ登録するという自動化を行ったところ、申請から最短4日での給付が可能となりました。また担当者は電話応対などの別業務に専念できる環境を実現することができました。
参考:WinActor®導入事例・自治体編【鹿児島県奄美市役所】高精度なAI-OCRサービスとWinActorの連携により特別定額給付金の支給を最短4日で実現
まとめ
RPAは、パソコンでの事務作業を自動化できるツールです。業務ルールが明確で、作業手順が決まっているような定型業務を自動化することを得意としています。PC作業の自動化ツールとしてはVBAが広く知られていますが、RPAはVBAと違い複数のアプリケーションをまたぐ業務でも自動化が可能です。
RPAを導入すると企業は様々なメリットを享受できます。人が行うべき業務とRPAが行う業務をすみ分け、企業の生産性を向上することができます。また作業中のヒューマンエラーによるミスを削減できるため、業務品質の向上も見込めます。
オフィスのDX推進や働き方改革強化のために、ぜひRPAの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
RPAを使いこなして業務を効率化しよう
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分析屋によるRPA導入サポート事例紹介
ふるさと納税の煩雑な事務業務を自動化
ふるさと納税の受発注・配送手配業務にRPAを導入しました。
これまで行っていた煩雑なデータ処理、発注、配送連絡業務を自動化し、大幅な効率化を実現しました。
従来はシステムへのデータ登録更新、事業者への発注書送付、配送業者への送り状発行依頼などを手作業で実施していました。RPA導入後、Excel設定と実行のみで自動処理され、担当者の作業時間を削減、人的ミスを抑制できるようになりました。
繁忙期の受発注増にも迅速に対応可能となり、担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになりました。RPAは業務効率化とリソース最適化に貢献しています。