機械学習エンジニアの将来性は?需要や年収、スキル、キャリアパスを解説

機械学習エンジニアは、AI技術を活用して課題解決を行う専門職で、AIモデルの設計・構築・運用を主に担います。AIの技術進化で機械学習エンジニアが担う業務の一部は自動化されつつありますが、依然として人材不足な状態が続いています。ハードスキルに加えてAIに淘汰されないソフトスキルを持った機械学習エンジニアの需要はより高まることが見込まれるため、将来性は高いといえるでしょう。

では、機械学習エンジニアになるためにはどのようなスキルや方法があるのでしょうか?

この記事では、機械学習エンジニアの定義および将来性や仕事内容、さらには時代に淘汰されない機械学習エンジニアになるために必要なスキルについて徹底解説しています。未経験から機械学習エンジニアを目指すための具体的な流れもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

機械学習エンジニアの基礎知識

機械学習エンジニアとは、AI技術を活用して経営課題の解決や意思決定の手助けを行うために「AIモデルの設計・構築」「運用環境の構築」「AIアプリケーションの開発」を行う専門職です。

機械学習エンジニアは技術的な課題を解決する役割を主に担いますが、要件定義からAIモデルの運用まで一気通貫で対応するケースも多いです。

厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」では、日本で機械学習エンジニアに従事する人は約21万人ほどいるとされています。

機械学習エンジニアの将来性

機械学習エンジニアは人材不足の状態である

2024年2月の産業別景況動向調査では、機械学習エンジニアが属する「情報通信業」の正社員不足感が、「学術研究・専門技術サービス業」「建設業」に次いで3番目に高いという結果が出ています。

また、ハローワーク求人統計データでは機械学習エンジニアの有効求人倍率は1.95であり、人材不足の状態であるといえます。

機械学習エンジニアの重要性が高まる

法人企業景気予測(2024年12月)では「大企業」、「中堅企業」ともに前期と比べて景気が上昇しています。今後はこの景気が維持されると予測されており、技術進化とビジネスニーズの多様化で機械学習エンジニアの重要性が高まるとみられています。

機械学習エンジニアの需要は極めて高く将来性は明るい

技術進化とビジネスニーズの多様化にともないAIは様々な分野での応用がたえまなく広がっています。このような状況下において、機械学習エンジニアは人材不足の状態であり需要は極めて高いといえます。

機械学習エンジニアの仕事内容

AIを用いた技術的な課題解決のための要件定義

「ビジネス課題」を「AI」で「どのように」解決するのか?そのためには「なに」が「どれだけ」必要なのかを明確にする作業です。具体的には、課題および課題のどの部分にAIを適用するのかを整理します。AIによって達成すべき具体的な目標性能(精度、速度、応答時間など)やデータ要件、システム要件も必要です。また、AIシステムの性能をどのように評価するかの基準(指標、テスト方法など)や、AIモデルの再学習やアップデートに関する要件なども必要です。

AIモデルの設計および構築・運用

設計では、どのような機械学習アルゴリズムを用いて、どのようなデータに基づき、どのような出力を得るかという基本方針を定めます。設計に基づいて実際にAIモデルを実装し、データを用いて学習させる段階が構築です。構築・学習したAIモデルを実際のシステムに組み込み、継続的に利用・監視・改善していく段階が運用です。これら一連の段階を通して、ビジネス課題の解決に対して継続的な支援を行っていきます。

AIモデル用学習データの準備、データ処理、特徴量エンジニアリング

データ分析の世界でよく使われる言葉として「Garbage in, Garbage out」があります。直訳すれば「ゴミからはゴミしか生まれない」となりますが、これは「使うデータが無意味もしくは偏りがあるデータならば、分析結果も無意味もしくは偏りがある」という意味を持つ言葉です。

機械学習でも同様に、モデルに投入する入力データの質を担保し、正確なデータセットを準備することが必要です。そのために、データの前処理や特徴量エンジニアリングを行います。

AIモデルの性能評価と改善

作成したモデルが正しく予測できているか性能の評価を行い、必要に応じてモデルの改善を行います。モデルの性能評価では、評価指標を用いてモデルの良し悪しを判断します。それに加えて、ビジネス課題と照らし合わせたオフラインやオンライン検証を行い、核心となるビジネス課題の解決につながるかどうかを重視して判断する必要があります。

AIの運用環境の構築およびAPIやアプリケーションとしての提供

開発環境で作成したモデルを本番環境に展開(デプロイ)します。場合によっては本番環境の構築から始めることもあります。また、運用方法によってはAPIやアプリケーションとして提供することもあるでしょう。その際にAPIやアプリケーションの開発を行うこともあります。

機械学習エンジニアの年収

全国の機械学習エンジニアの年収と求人賃金(月額)

厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、全国の機械学習エンジニアの年収は約558万円です。国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」では、正社員(正職員)の平均給与が530万円であることから、機械学習エンジニアの年収は平均年収以上といえるでしょう。また、ハローワーク求人統計データでは、全国の機械学習エンジニアの求人賃金(月額)は30.3万円となっています。

全国の賃金分布と年齢別年収

全国の賃金分布では、26~27.9万円が全体の11%で最多、次いで40~44.9万円が10%になっています。年齢別年収では、20~24歳が328万円であり、そこから右肩上がりに給与が増え55~59歳が719万円で最高値になっています。これらのことからスキルや経験を積むごとに給与が増えていくといえます。高年収を得るためには継続してスキルを磨いていくことが鍵といえるでしょう。

機械学習エンジニアに必要なスキル

データ分析スキル

データ分析で使われる言語としてPython、R、C++、Javaなどがあります。中でもPythonはデータ分析の主流言語として多く使われており、必須のスキルといえるでしょう。Pythonでよく使われるライブラリには、TensorFlow、Keras、PyTorch、OpenCVなどがあり、各ライブラリでどのようなことができるかを理解しておく必要があります。

機械学習

機械学習モデルの構築とトレーニング、評価手法の理解は必須スキルです。機械学習の中でも近年技術進歩が著しいディープラーニングや自然言語処理(NLP)、生成AIなどの知識があるエンジニアは市場価値が高くなります。

データ前処理

準備したデータをそのまま使うことはせず、必要な加工を施したデータをモデルに投入することが一般的です。これは入力データの質を担保し、正確なデータセットを準備するためです。具体的には、データの重複、欠損、ノイズ、表記揺れなどを処理する「データクレンジング」や最小値を0、最大値を1など一定のルールに基づいて一定の範囲に値を変換処理する「スケーリング」、カテゴリデータを数値データに変換処理する「エンコーディング」などを行います。

また、既存の特徴量のみではモデルの性能が上がらない場合には、モデルの性能に有用な特徴量を作り出す「特徴量エンジニアリング」を行い、予測精度の高いモデルを構築するスキルも求められます。

アルゴリズム理解

機械学習のアルゴリズムには、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークなどがあります。解決したい課題や得たい出力値によって適切なアルゴリズムを選択する必要があります。また、モデルを最適化させる手法である勾配降下法および、損失関数などのワードを理解しておくことも必要です。

モデルの性能評価を行う際に使用する評価指標はアルゴリズムによって変わってくるため、関連する各種評価指標の理解も必要です。

クラウドスキル

近年ではクラウド基盤を活用して機械学習モデルの構築から展開(デプロイ)まで行うことが一般的になってきました。特にAWS(SageMaker)、GCP(AI Platform)などがありこれらを活用するスキルが必要です。

ソフトウェアエンジニアリング

機械学習モデルの構築では、コードの最適化とバージョン管理(Git)を行い、効率的にチーム開発を進めます。また、MLflowなどの機械学習のライフサイクル全体を管理するためのツールを活用し、機械学習プロジェクトの効率化と生産性向上を行います。ときにはAPIの開発やデプロイメントスキル(本番環境への展開やチューニング、運用のモニタリング)が必要になることもあります。

時代に淘汰されない機械学習エンジニアになるには?

AIを作るだけの機械学習エンジニアは淘汰される?

AI技術の進歩により機械学習エンジニアが担う業務の一部はより簡易化しています。例えば、データの収集や前処理といったプロセスは、AIによって代替できるケースが少なくないでしょう。今後も、AI技術はさらに進化していくと考えられます。ただし、こうした自動化が可能なのは、機械学習エンジニアが担う業務の一部分に過ぎません。ビジネス課題の本質を見極め、課題解決につながる開発目標へと落とし込む一連のプロセスは、今後も人間にしか担えない役割として残り続けるでしょう。

課題設定力

機械学習ありきではなく、課題解決に本当に機械学習が適しているかをきちんと見極め、妥当な目標を定めることが大切です。目標の妥当性や期待値の調整をビジネスサイドと行い、機械学習を活用することで得られる期待値をコントロールすることができる機械学習エンジニアは重宝されます。

コミュニケーション力

目標や期待値が曖昧なままだと、たとえ高精度なモデルができても現場が結果に納得できず、手戻りが発生するリスクがあります。事前に関連するステークホルダーを巻き込みながら、目標のすり合わせや期待値の調整を綿密に行うことが大切です。データが足りない場合は自ら必要なデータを集めに行き、時には上長や役職者を巻き込んで相手を動かす力も必要になってきます。このように周りを巻き込んでプロジェクトを推進できるコミュニケーション力を備えた機械学習エンジニアは時代に淘汰されず残り続けるでしょう。

機械学習エンジニアとデータサイエンティストとの違い

データサイエンティスト

主に「課題定義」「データ分析」「ビジネス示唆の提供」を担当し、ビジネス視点を重視します。

機械学習エンジニア

主に「AIモデルの設計・構築」「運用環境の構築」「AIアプリケーションの開発」を担当し、技術実現を重視します。AIエンジニアは技術的な課題を解決する役割を担いながら、要件定義からAIモデルの運用まで一気通貫で対応するケースも多くみられます。必要に応じてインフラ設計、クラウド環境での実装、さらにはアプリケーション開発まで対応できるスキルが求められます。

また、現在はオープンソースのAIアルゴリズムを活用することが一般的であり、AIモデルのカスタマイズやチューニングに注力することが多いです。

機械学習エンジニアのキャリアパス

データサイエンティスト

高度なデータ分析技術を駆使して、ビジネスインサイトを提供し、戦略的な意思決定をサポートします。特に、データサイエンティストは機械学習モデルの実装を通じてビジネス意思決定の継続的支援を実現していく人といえます。

マネジメント職(PM/PL)

プロジェクト計画 (目標設定・スコープ・リソース・タイムラインの設定)、プロジェクト管理、チーム管理、リスク管理、ステークホルダーとのコミュニケーション (要件調整・進捗報告など)、プロジェクト評価と報告を行います。

データアナリスト

データ収集、データ分析、レポート作成(データの可視化と基本的な分析を通じてビジネスの意思決定を支援)を行います。データアナリストはレポートを通じて日々のビジネス意思決定を支援します。スピードが重視されるためサイエンティストに比べると分析精度は浅めのことが多いです。

スペシャリスト

特定の領域(自然言語処理、コンピュータビジョンなど)のエキスパートとして活躍します。

コンサルタント

様々な企業のAI戦略立案や導入支援を行います。

未経験から機械学習エンジニアになるには

自己学習でスキルを習得する

一般的なコーディングスキルに加えて機械学習に特化した知識とスキルが必要です。書籍やオンライン学習プラットフォームを活用して学習を進めるとよいでしょう。

機械学習エンジニアになるために役立つ資格や試験

機械学習エンジニアに関連する資格や試験としては次のものがあります。これらの資格を保持していることで自己研鑽やスキルの客観的証明になり、目標を達成するために自己学習できる人材であることをアピールすることができます。

  • Google Cloud Professional Machine Learning Engineer
  • AWS Certified Machine Learning – Specialty
  • Microsoft Certified: Azure AI Engineer Associate
  • TensorFlow Developer Certificate
  • Cloudera Certified Associate Data Analyst
  • G(ジェネラリスト)検定
  • E(エンジニア)資格
  • 統計検定
  • Python 3 エンジニア認定データ分析試験

機械学習エンジニアに関連する職種で実務経験を積む

データエンジニアなど関連する職種で経験をつみながら社内公募の活用や転職などで機械学習エンジニアへのキャリアアップ・キャリアチェンジを目指します。公募のタイミングは不確定であることが多いため、転職をして希望するポストに就く方が多いです。

まとめ

機械学習エンジニアの将来性は明るく、多くの業界で需要が極めて高い状態であるといえます。機械学習エンジニアはAIに関する技術的な課題を解決する役割を担いながら、要件定義からAIモデルの運用まで一気通貫で対応するケースも多く、幅広いスキルが求められる職種です。機械学習エンジニアとしての経験は、データサイエンティストやマネジメント職など関連する職種に生かすことができます。

未経験から機械学習エンジニアになるには自己学習で必要なスキルを学びつつ、関連する職種で経験をつみながら機械学習エンジニアへのキャリアアップ・キャリアチェンジを目指すことが一般的です。

分析屋では、未経験からでも活躍できる機械学習エンジニアを育てられるよう教育やキャリアパスの支援に力を入れています。ハードスキル+ソフトスキル(おもてなし精神)の獲得を通して、顧客の本質的なニーズに応えることのできるエンジニアになることで、市場価値の向上や年収アップを目指していくことができます。

機械学習エンジニアとしてのキャリアを築きたい方は、ぜひ分析屋の採用ページをご覧ください。

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