
AIやデータサイエンスが注目される中で、機械学習エンジニアの存在はますます需要が高まっています。しかし、機械学習エンジニアにどのようなスキルや資格が求められるのか、知らない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、機械学習エンジニアの仕事内容や必要スキル、資格取得のメリットのほか、おすすめの資格について解説します。
機械学習エンジニアとは?
機械学習エンジニアは、AI技術の中でも機械学習(Machine Learning)の分野に特化し、アルゴリズムの実装や運用、機械学習モデルの精度向上などを担う職種です。ビジネスの課題に対して、データを活用した解決策を構築・提供する役割を果たします。
また、単に技術的な開発をするだけでなく、データの前処理や実行環境の構築のほか、機械学習モデルの評価・再学習といったプロセスも設計・実施します。ビジネスへの理解や現場との連携も求められるため、ビジネスパーソンとしての総合力が試される職種です。
ここでは、AI・ディープラーニングとの関係や、機械学習の種類についても詳しく見ていきましょう。
機械学習とAI・ディープラーニングとの関係
AIは、人間の知的活動を模倣する技術全般を指す、広い概念です。その中に機械学習があり、さらにその中の一部としてディープラーニング(深層学習)が位置付けられています。つまり、ディープラーニングは機械学習の一種であり、AIを成す一部です。
近年では、画像認識や自然言語処理などの分野でディープラーニングが特に注目され、企業の導入も進んでいます。
機械学習の種類
機械学習にはいくつかの種類があり、目的やデータの性質に応じて適切な手法を選択する必要があります。機械学習は主に、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに分類されます。
●教師あり学習
教師あり学習は、機械学習モデルに対して正解ラベルのついたデータをもとに学習させる方法で、回帰分析や分類問題に多く用いられます。
●教師なし学習
教師なし学習は、正解ラベルのないデータから構造を見つけ出す手法で、クラスタリングや次元削減などに利用されます。
●強化学習
強化学習は、エージェントが試行錯誤を通じて最適な行動を学ぶ方法で、ロボティクスやゲームAIなどに応用されています。
なお、データサイエンティストやAIエンジニアとの職種の違いについて詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
機械学習エンジニアはやめとけ?その理由と仕事の将来性について解説
機械学習エンジニアの仕事内容
機械学習エンジニアは、アルゴリズムの設計・開発だけでなく、データ処理、運用環境の構築、最新技術の調査など、幅広い業務を担当します。ここでは、代表的な4つの業務内容を紹介します。
アルゴリズムの開発、実装
機械学習エンジニアの中核となる業務は、アルゴリズムの開発と実装です。機械学習の現場では、Pythonが主要言語であり、NumPy、Pandas、TensorFlow、Matplotlibなどのライブラリーを活用して、機械学習モデルを構築・評価します。
また、業務ではどの手法を使うかといった選定に加え、精度や処理速度、メンテナンス性まで考慮した実装が必要です。そのため、理論と実践のバランスがとれた判断力が求められます。
機械学習に用いるデータの収集、整形
高品質なデータがなくては、優れた機械学習モデルは構築できません。そのため、機械学習エンジニアは、必要なデータを収集し、それらを機械学習に適した形に整える作業も担います。データベースのクエリ、APIの利用、Webスクレイピングなどを駆使してデータを取得し、加工・前処理を行います。
そのままでは利用できないデータに対して、欠損値処理や外れ値の除去、形式統一といったクレンジングを施し、機械学習モデルが学習しやすい構造へと整形していくことも機械学習エンジニアの業務です。
機械学習モデルを動作させる環境の構築
開発した機械学習モデルを安定的に動作させるためには、実行環境の構築が欠かせません。機械学習モデルによっては大量のデータを扱うため、処理能力やストレージ、ネットワーク設計を考慮した環境を構築することも重要です。
なお、機械学習はクラウドサービスと連携するケースも増えており、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)などのプラットフォーム上で、API開発やバッチ処理の自動化を行うこともあります。こうした環境は、プロジェクトによって異なるため、汎用性と柔軟性を持った設計スキルが求められます。
機械学習エンジニアに必要な知識・スキル
機械学習分野は技術革新が早く、新たなアルゴリズムやツール、ライブラリーが日々登場しています。そのため、現場で活躍し続けるには、継続的なインプットと学習が欠かせません。
また、機械学習エンジニアとして活躍するには、アルゴリズムや言語の知識だけでなく、数学的な素養やビジネスへの理解、チームでの連携能力も不可欠です。ここでは、機械学習エンジニアに必要な知識・スキルを、「テクニカルスキル」と「ビジネススキル」の2つに分けて紹介します。
必要なテクニカルスキル
機械学習エンジニアのテクニカル面で基本となるのは、Pythonを中心としたプログラミングスキルです。特に、NumPy、Pandas、Scikit-learn、TensorFlow、PyTorchなどのライブラリーを扱えることは必須条件です。
加えて、SQL(Structured Query Language)によるデータ抽出、Gitでのバージョン管理、オープンプラットフォームのDockerといったコンテナ技術も求められる場面が増えています。
こうしたテクニカルスキルは、論文のレビューや、Kaggleといったオンラインプラットフォームが開いているコンペティションへの参加などを通じて、実践的に習得していくことが求められます。
また、機械学習アルゴリズムを深く理解するには、統計学、線形代数、微分・積分、確率論といった数学の知識も必要です。これらの基礎があって初めて、機械学習モデルの構造や挙動を論理的に解釈し、最適な改善ができるようになります。
必要なビジネススキル
機械学習エンジニアといえど、技術だけでは現場で成果を上げることはできません。機械学習モデルをビジネスに応用するには、まず何のために使うのかを理解し、解くべき課題を正確に捉える必要があります。そのためには、業務知識やビジネス全体の流れに対する理解が求められるでしょう。
また、チーム開発や関係部署との連携も多く発生するため、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力も重要です。専門的な内容を非エンジニアに伝える力と、成果を共有して納得を得る力があってこそ、機械学習エンジニアは組織に貢献できる存在になります。
機械学習エンジニアが資格を取得するメリット
機械学習エンジニアを目指す上で、資格取得によって得られるメリットは多岐にわたります。ここでは、資格取得がキャリアにどう役立つのかを、具体的に見ていきましょう。
スキルの証明になる
資格を履歴書や職務経歴書に記載できれば、自身のスキルを客観的に示す材料となります。特に、実務経験が浅い段階では、資格が一定の知識と能力を備えていることへの信頼につながります。
採用担当者にとっても、保有資格は候補者を客観的に評価する上で大いに役立つ基準です。特に、未経験から機械学習エンジニアを目指す人は、スキルの証明として資格は取得しておいたほうがいいでしょう。
キャリアアップにつながる
資格取得を通じて学んだ知識は、より高度な業務をこなすための土台になります。実務を通じて体系的に勉強できる機会は少ないため、資格学習は知識の整理と定着に役立ちます。
また、資格によっては中上級レベルの内容もカバーしており、取得後にマネジメントや設計者へとキャリアを広げるきっかけにもなるでしょう。
学習目標が明確になる
独学での機械学習は、学習内容の範囲が広いこともあって、知識の積み上げに迷うかもしれません。しかし、資格には出題範囲や出題傾向が明示されており、学習すべきポイントが明確です。
その結果、限られた時間の中で効率的に学ぶことができ、モチベーションの維持にも役立ちます。体系立てて基礎を学びたい初学者や、実務で足りない知識を補いたい中級者にとって、資格は強い学習ガイドになるでしょう。
機械学習のコミュニティに参加できる
一部の資格では、合格者を対象とした限定コミュニティや勉強会が設けられています。これらに参加することで、同じ分野に関心を持つ人とのネットワークを築けたり、最新情報をキャッチアップできたりします。 また、勉強会やイベントへの参加は、実務以外でのアウトプットの機会にもなり、知識の定着や自己ブランディングにもつながるでしょう。孤独になりがちな学習において、仲間とのつながりは大きな励みになるはずです。
機械学習エンジニアとして評価される資格

続いては、機械学習エンジニアとして評価される資格を紹介します。自分のスキルレベルやキャリアプランに合わせて、取得したい資格を選んでいきましょう。
G検定(ジェネラリスト検定)
G検定(ジェネラリスト検定)は、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供するリテラシー試験で、AI・機械学習・ディープラーニングの基礎知識を体系的に学べます。未経験者でも比較的挑戦しやすく、機械学習分野への最初のステップとして有効です。ビジネス職の方がAIリテラシーを習得するためにも使われています。
E資格(エンジニア資格)
E資格(エンジニア資格)も、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する技術者向けの専門資格です。深層学習の理論や実装技術を問う内容で、実務レベルの理解が必要となります。
受験には認定講座の修了が必須となるため、一定の学習時間と費用はかかりますが、実装スキルの証明として強力なアピール材料になるでしょう。エンジニアとして開発現場に立つことを目指すなら、取得を目指すべき資格です。
Python 3 エンジニア認定基礎試験
Python 3 エンジニア認定基礎試験は、Pythonの文法やデータ処理の基本を問う入門資格で、NumPyやPandasを使った基礎スキルを証明できます。初学者の学習到達度を測るのに適しており、Pythonをこれから使う人にもおすすめです。
AWS Certified Machine Learning – Specialty
AWS Certified Machine Learning – Specialtyは、AWS上での機械学習システムの設計・実装・運用能力を問う中上級資格です。クラウドとAIのスキルを組み合わせて活躍したい方に向いており、AWS環境に強いエンジニアとしての信頼性が高まります。
Professional Machine Learning Engineer
Professional Machine Learning Engineerは、GCPでのML開発・運用スキルを評価する国際資格です。MLOps、DevOps、CI/CDといった、実務寄りの手法の内容も含まれており、チーム開発やクラウド連携に携わる方におすすめといえます。
マイクロソフト認定: Azure AI エンジニア アソシエイト
マイクロソフト認定: Azure AI エンジニア アソシエイトは、Microsoft Azure上でAI・MLサービスを活用する知識を問う資格です。特に、Azureを使ったソリューション構築に関わる人にとって、設計・展開スキルの証明として有効です。
AI実装検定 (B級・A級・S級)
AI実装検定は、現場での実装力を評価する段階別の試験です。難度は、入門者向けのB級をはじめ、E資格にも挑戦できるレベルのA級、最難関のS級があります。試験ではPython、SQL、Jupyter Notebookなどの実践的スキルが問われ、基礎から応用まで段階的にレベルアップしたい人に向いています。
Generative AI Test
Generative AI Testは、ChatGPTや画像生成AIなど、生成AIに特化したリテラシー試験です。新しいAI分野への関心が高い人や、現場で生成AIを扱う可能性がある人に向いています。
機械学習エンジニアの資格は、キャリア構築の土台になる
機械学習エンジニアを目指す際や、転職・昇進の節目において、資格は強い武器になります。ただし、資格は取得自体がゴールではなく、スキル習得やキャリア設計の「道しるべ」と捉えることが重要です。
自分が今どのレベルにいて、どこを目指したいのかによって、取得すべき資格も変わります。例えば、初学者はG検定やPython 3 エンジニア認定基礎試験で土台を固め、中級者以上はE資格やクラウド系資格にチャレンジするなど、焦らずにスキルを積み上げていくことが、将来的な市場価値の向上につながるでしょう。
また、分析屋のように、実務を学びながら資格にも挑戦できる職場を選ぶこともおすすめです。分析屋では、顧客の本質的な課題に向き合いながら、機械学習やデータ分析のスキルを実践的に磨くことができます。さらに、ビジネス理解やコミュニケーション力を高められる風土もあり、エンジニアとしての総合的な成長へとつながります。
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