MATLABで何ができる?Pythonとの違いとAI・制御での強み

「AI開発を始めたいけど、いつも聞くPythonとMATLABって何が違うの?」
「Excelでのデータ集計からステップアップしたいけど、MATLABは難しそう…」
「制御系に強いとは聞くけど、自分のデータ分析スキルにどう役立つの?」

今、この記事を読んでいるあなたは、そんな疑問やキャリアへの漠然とした悩みをお持ちかもしれません。

MATLAB(マトラボ)は、特定の分野で「Pythonよりも強い」専門的なツールです。

この記事では、MATLABでできること、特に「AI」と「制御」における強み、そして最大のライバルであるPythonとの明確な違いを、中学生でもわかるように解説します。

最後まで読めば、「自分はMATLABとPython、どちらを学ぶべきか」という疑問がスッキリ解決するはずです。

MATLABとは?

結論から言うと、MATLABとは「計算や分析が得意な、専門家向けの万能ツールボックス」です。

もう少し分かりやすく言えば、「算数や理科の実験に必要な道具(高機能な電卓、グラフ用紙、難しい計算式)が、最初から全部そろっているパソコンソフト」とイメージしてください。

MATLABは、3つの要素で成り立っています。

  1. プログラミング言語(計算が得意な言葉)
    数字、特に「行列(タテヨコに並んだ数字の集まり)」を計算するのが非常に得意な専用言語です。
  2. 対話型実行環境(作業する場所)
    コードを書いたり、すぐに計算結果を見たり、グラフを作ったりする「作業デスク」のような場所です。
  3. Toolbox(専門家向けの追加道具セット)
    これがMATLABの最大の強みです。例えば「AI開発用セット」「電気回路の設計用セット」など、専門分野のプロが使う高品質な道具(Toolbox)が最初から用意されています。

MATLABでできること(主要3分野)

MATLABは、特に「①AI開発」「②シミュレーション(模擬実験)」「③データ分析」の3つの分野で活躍します。

1. AI(機械学習・ディープラーニング)開発

「AI」と聞くと、難しいプログラミング(Python)を想像するかもしれません。 しかしMATLABは、「AI開発用の道具セット(Toolbox)」を使うことで、比較的少ないコードでAIモデルを開発できます。

特に、画像認識(不良品を見つけるなど)や、未来の数値を予測するAIを作るのが得意です。「まずはAI開発を試してみたい」という人にとって、MATLABは強力な選択肢になります。

2. Simulinkによる制御・シミュレーション(モデルベース開発)

ここがMATLABの「真骨頂」であり、Pythonには真似できない領域です。

MATLABには「Simulink(シムリンク)」という、兄弟のようなソフトがあります。 これは、プログラミング(文字)ではなく、「ブロック(絵)」を線でつないで「仕組み」を設計するソフトです。

● (例)自動運転の車の「ブレーキがどう動くか」
● (例)工場のロボットアームが「どう製品をつかむか」
● (例)風力発電の「効率的な風車の回り方」

こうした複雑な「モノの動き」を、実際に作る前にパソコン上で模擬実験(シミュレーション)できるのです。現実世界で実験する前に、安全に「もしも」を試せる。これが、自動車、航空宇宙、ロボット産業でMATLAB(Simulink)が「世界標準」である理由です。

3. データ分析・可視化

「Excelでのデータ管理に限界を感じている…」そんな方にもMATLABは有効です。

Excelで開けないような巨大なデータ(数ギガバイト!)も高速に読み込み、処理できます。 また、複雑な統計処理や、データを立体的に表示する「3Dグラフ」なども、Toolboxを使えばすぐに実行できます。

Excelの延長線上で、より高度なデータ分析を始めたい人にとって、MATLABは頼れる相棒になります。

【徹底比較】MATLABとPython(Numpy/Scipy)の違い

「結局、Pythonと何が違うの?」 これは、キャリアチェンジを考える方にとって、最も重要な疑問でしょう。

結論から言うと、一番の違いは「①お金(コスト)」と「②得意分野(と、その理由)」です。

違い1:コスト(有料のメーカー品 vs 無料のDIY)

MATLAB:有料(プロ用の高級工具セット)

MathWorksという会社が開発・販売している「メーカー品」です。高品質な道具(Toolbox)と手厚いサポートが受けられる代わりに、ライセンス費用(利用料)がかかります。

Python:無料(DIY工具セット)

オープンソースと呼ばれ、誰でも無料で使えます。世界中の人が作った便利な部品(ライブラリ)を、自分で集めて(インストールして)使います。

違い2:実行環境と専門性(全部入り vs 自分で組み立て)

MATLAB:「メーカー純正品」ですべてが揃う

Toolbox(道具)はすべてMathWorks社が品質を保証しています。「道具Aと道具Bがケンカして動かない!」といったトラブルが非常に少なく、導入すればすぐに専門的な分析を始められます。

Python:「自分で組み立てる」必要がある

無料の部品(ライブラリ)は便利ですが、「AとBを組み合わせたら動かなくなった」という「環境構築」の落とし穴でつまずく初心者が多いのも事実です。どの部品(ライブラリ)が信頼できるか、自分で見極める知識も必要です。

違い3:得意分野(なぜ、そこが得意なのか?)

MATLAB(Simulink):『モノを動かす』設計・制御が最強

もともと「行列計算」という数学の基礎から発展しており、物理的な動きを計算するのが大得意だからです。さらに「Simulink」は、現実のモノの動きや制御システムを「ブロック線図」という視覚的なモデルで表現するために専用設計されています。そのため、複雑なシステム全体の動きを模擬実験(シミュレーション)するのに最適なのです。

Python:『Web』や『ITシステム』と連携するのが得意

もともと「汎用プログラミング言語」として、「何でも作れること」を目指して設計されたからです。InstagramのようなWebサービスからデータ分析まで幅広く使え、特にWeb開発用の部品(フレームワーク)や、ITシステム(サーバー)と連携させるための接着剤としての機能が豊富なため、WebやITの世界で広く採用されています。

結局、どちらを学ぶべき?

これは、あなたの「目的」によって答えが変わります。

MATLAB(Simulink)を推奨する人

  • 自動車、ロボット、製造業など「モノづくり」の分野に進みたい人
  • 品質管理や製造ラインのシミュレーションをしたい人

Pythonを推奨する人

  • IT業界やWebサービス業界で、汎用的に活躍したい人
  • 現在のシステム開発の知識を活かしたい人
  • テキスト(文章)のAI分析や、Webアプリ開発に興味がある人

結論として、「まずは自分の目指す業界や、今の仕事に近い方から学ぶ」のが正解です。 (もちろん、両方使えるようになれば、非常に市場価値の高い人材になれることは間違いありません!)

MATLABのメリット・デメリット(強み)まとめ

ここで、MATLABの強みと弱点を整理しておきます。

結論は、「専門分野での圧倒的な信頼性」がメリット、「お金がかかること」がデメリットです。

メリット(強み)

❶ Simulinkによるシミュレーションが最強
「モノを動かす」設計・制御の分野では、世界標準であり、競合がいません。

❷ 高品質な道具(Toolbox)
AI、信号処理、画像処理など、専門分野のプロが使う「お墨付き」の機能が揃っています。

❸ 安心のサポート体制
有料なだけあり、メーカー(MathWorks)の手厚いサポートを受けられます。

デメリット(弱点)

❶ ライセンス費用が高額
プロ用ツールであるため、個人で気軽に買うには高価です。(会社で導入するのが一般的です)

❷ Web連携は不得意
Pythonのように、MATLABでWebサイトを作ることはできません。

❸ ネット上の情報が(Pythonよりは)少ない
無料のPythonに比べると、学習情報やコミュニティの規模は小さくなります。

「ツールが使える」から「課題を解決できる」へ

MATLABとPythonの違いは分かりました。 では、キャリアアップを考えるあなたにとって、本当に市場価値が高いのはどちらを学ぶことでしょうか?

結論から言います。 これからのAI時代、市場価値が高いのは、MATLABかPythonかという「ツール」を使える人ではなく、ツールを使って「お客様の課題を解決できる」人です。

MATLABとPython、どちらが「市場価値」が高いのか?

極端な話、ツールを使えるだけの「作業者」は、いずれAIに仕事を奪われるかもしれません。 「このデータをMATLABで処理して」 「この仕様書通りにPythonで開発して」 こうした「指示待ち」の仕事の価値は、どんどん下がっていきます。

本当に価値があるのは、「ツールを選定し、ビジネス課題を解決する『提案者』」です。

分析屋が考える「提案できる分析者」への道

もしあなたが、「指示通りの作業者」から「提案できる分析者」にステップアップしたいなら、「技術」と「相手の課題」を結びつける視点が必要です。

● もしあなたが現職のSEなら、システム開発の経験(合理)は素晴らしい武器です。その技術に、「お客様はなぜこのシステムが必要なのか?(情理)」という背景を考える視点を加えれば、単なる開発者ではなく、ビジネスを動かす「データ分析者」として上流から提案できます。

● もしあなたがIT以外の一般職なら、あなたが持つ現場知識(情理)こそが、AIにも負けない宝です。その知識に、MATLABやPython(合理)という道具を組み合わせれば、AI技術者が思いつかないような「現場が本当に喜ぶ業務改善」を主導できます。

● もしあなたが現職の分析者なら、Pythonでデータを回す技術(合理)は完璧かもしれません。しかし、お客様が本当に悩んでいる「データに現れない背景や事情(情理)」を汲み取って初めて、「あなたに次もお願いしたい」という信頼関係が生まれます。

必要なのは「翻訳力」と「おもてなし力」

私たちが大切にしているのは、この「合理(データ・技術)」と「情理(経験・想い)」を結びつける力です。

顧客の「モヤっとした悩み(情理)」を「分析の設計図(合理)」に翻訳し、 データ(合理)だけでなく、お客様の気持ちや現場の事情(情理)にも寄り添う「おもてなし」の心。

これこそが、AI時代に「指示待ち作業者」で終わらないための、最強のスキルだと信じています。

MATLABの学習方法と価格

MATLABに興味が出てきた方へ、学習方法と価格についてご紹介します。

結論は、学習は「公式の無料教材」から、価格は「個人用なら買い切り、プロ用は見積もり」となります。

初心者の学習ステップ

まずは、MathWorks社(開発元)が提供している無料のオンライントレーニング「MATLAB Onramp」を試してみるのが一番です。 (「MATLAB Onramp」で検索してみてください) ゲーム感覚で、MATLABの基本操作を2時間ほどで学べます。

MATLABの価格・ライセンス(費用感)

MATLABの価格は、利用目的(ライセンス)によって大きく異なります。

MATLAB Home(個人・非商用)

  • 価格(目安):  買い切り約17,000円程度。
  • 特徴:  非営利目的の個人利用限定です。Simulinkや各種Toolbox(追加道具)は、それぞれ約5,000円程度で別途購入(買い切り)となります。
  • 注意点:  あくまで趣味や個人の学習用です。

MATLAB Student(学生)

  • 価格(目安): 買い切り約10,000円程度。
  • 特徴: 学生(教育目的)向けのライセンスです。

Standard / Professional(企業・商用)

  • 価格: 見積もりが必要です。
  • 特徴: 企業の業務で利用する場合は、年間のサブスクリプション(保守)契約が基本となります。価格は使用するToolboxの数やライセンス形態によって大きく変動します。

詳細な価格や購入については、MathWorksの公式ストア(または見積もりページ)をご確認ください。

MathWorks公式ストア(個人・学生向け):  https://jp.mathworks.com/store/
価格とライセンス(法人向け):  https://jp.mathworks.com/pricing-licensing.html

まとめ

最後に、この記事の要点を振り返ります。

  • MATLABは「計算・分析」が得意なプロ用の万能ツールボックス
  • 特に「AI開発」や、Simulinkを使った「制御・シミュレーション」に圧倒的な強みを持つ。
  • Pythonとの最大の違いは「有料(メーカー品)」か「無料(DIY)」か、そして「得意分野(MATLABはモノ制御、PythonはWeb)」
  • どちらを学ぶべきかは、あなたの「目的(目指す業界)」で決める。

MATLABやPythonといった強力なツールを学ぶことは、あなたの市場価値を高める素晴らしい第一歩です。

しかし、もしあなたが、 「『言われた通りに作る』仕事から卒業したい」 「自分の『現場経験』や『ドメイン知識』を活かして、データ分析の世界に挑戦したい」 「データ(合理)とお客様の想い(情理)、両方を大切にする働き方がしたい」

と少しでも感じているなら、私たち分析屋の「おもてなし分析」という働き方を知ってみませんか?

ツールを使える「作業者」で終わるのではなく、お客様の課題に寄り添い、本当に感謝される「提案者」として、私たちと一緒に働きませんか?

あなたの挑戦を、お待ちしています。

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