Juliaの特徴とは?Python比較とメリット・デメリット

「AI開発やデータ分析の分野で、最近『Julia(ジュリア)』というプログラミング言語の名前をよく聞くようになった」
「なんでも、今人気のPython(パイソン)よりも実行速度が速いらしい」

今、この記事を開いたあなたは、そんな噂を聞きつけて、Juliaの可能性を探りに来たのではないでしょうか。

  • 本当にPythonより優れているの?
  • 今からJuliaを学ぶメリットって、具体的に何?
  • Pythonと比べて、何ができて何ができないの?

この記事では、そうした疑問をお持ちのあなた(データ分析のキャリアに関心のある方、現役のエンジニアや分析者の方)に向けて、Juliaの核心的な特徴から、Pythonとの具体的な違い、そして将来性まで、できるだけ分かりやすく解説していきます。

プログラミング言語「Julia(ジュリア)」とは?

結論から言うと、Juliaは「『Pythonのような書きやすさ』と『C言語のような速さ』を両立させる」ことを目指して開発された、比較的新しいプログラミング言語です。

特に、AI(人工知能)開発、大規模なデータ分析、複雑なシミュレーションといった「膨大な計算」が必要な分野で、その真価を発揮します。

開発された背景:「貪欲(Greedy)」な開発者たちの要求

Juliaは、2009年にMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者たちによって開発が始まり、2012年にオープンソースとして公開されました。

なぜ彼らは新しい言語を作ったのでしょうか? 2012年に公開された彼らのブログ記事「Why We Created Julia(なぜ私たちはJuliaを作ったか)」には、その理由が情熱的に書かれています。

当時の開発者たちは、こんな「わがまま」とも言える悩みを抱えていました。

  • PythonRは、コードが書きやすくて便利。でも、実行速度が遅い…。
  • C言語C++は、実行速度は文句なしに速い。でも、コードを書くのが大変…。
  • 「書きやすさ」と「速さ」を両立できる言語はないのか?

彼らは、両方の「いいとこ取り」ができる言語を求めました。 まるで「貪欲(Greedy)」なように、あらゆる言語の長所(Cの速度、Pythonの書きやすさ、Rの統計機能など)を詰め込んで設計されたのが、Juliaなのです。

名前の由来は?

これだけ情熱的な背景があると、名前にも壮大な由来がありそうですが…実は非常にシンプルです。

開発者の一人が「特に理由はなく、単に良い響きの名前だと思ったから」と語っており、これが通説となっています。

Juliaの5つの主な特徴・メリット

Juliaの最大の魅力は「速さ」ですが、それ以外にもデータ分析や科学技術計算の現場で嬉しいメリットがたくさんあります。

圧倒的な実行速度(JITコンパイラ)

Juliaの最大のメリットは、やはり実行速度の速さです。

なぜ速いのでしょうか? それは、Juliaが「JIT(ジット)コンパイラ」(Just-In-Time Compiler)という仕組みを採用しているからです。

専門用語が出てきましたが、心配いりません。 PythonとJuliaを、それぞれ「通訳者」に例えてみましょう。

  • Python(インタプリタ型) 人間の言葉(コード)を1行ずつ機械の言葉に翻訳(同時通訳)しながら実行します。手軽ですが、全体の処理に時間がかかります。
  • Julia(JITコンパイラ型) 人間の言葉(コード)を実行する直前に、まるごと機械の言葉に翻訳(逐次通訳)し、最適化(一番伝わりやすい表現に直す)してから実行します。最初の翻訳に少しだけ時間がかかりますが、一度翻訳してしまえば、あとは機械の言葉で超高速に動きます。

特に、何度も同じ計算を繰り返す(ループ処理)AI開発やデータ分析において、この「速さ」は強力な武器になります。

PythonやRに似た「書きやすさ」と「対話的実行」

Juliaは「速い」だけでなく、「書きやすい」言語です。 もしあなたがPythonやRを使ったことがあるなら、Juliaのコードは比較的すんなりと読めるはずです。

「対話的実行(REPL)」という、コードを1行書いたらすぐに結果が返ってくる機能も備えており、初心者の方でも、まるで電卓のように気軽に試しながら学習を進められます。

【コード比較】JuliaとPythonの文法の違い

「似ている」と言っても、いくつか違いがあります。 例えば、「1から10までを足し算する」という簡単なコードを見てみましょう。

▼ Pythonの場合 (インデント(字下げ)が重要です)

total = 0
for i in range(1, 11):
  total = total + i
print(total)
出力: 55

▼ Juliaの場合 (forの終わりをendで明示します)

total = 0
for i = 1:10
  global total = total + i
end
println(total)
出力: 55

(注:Juliaのバージョンや実行環境によっては global が必要な場合があります)

主な違いのポイント:

  • ブロック(かたまり)の示し方
    • Python: インデント(字下げ)
    • Julia: forやifの終わりをendで明記
  • 繰り返し(ループ)の書き方
    • Python: range(1, 11)(1から11の手前=10まで)
    • Julia: 1:10(1から10まで)
  • インデックス(配列の番号)
    • Python:0番目から数え始める(0-indexed)
    • Julia:1番目から数え始める(1-indexed)

Juliaは数学や統計の論文で使われる書き方(1始まり)に近いため、研究者や分析者にとっては直感的に書きやすいと言われています。

科学技術計算・データ分析に強い機能群

Juliaは、もともと科学技術計算のために作られた言語です。 そのため、統計処理、行列計算(線形代数)、多次元配列といった、データ分析に不可欠な道具が、最初から言語の標準機能として組み込まれています。

Pythonで「NumPy」のような追加ライブラリ(便利な道具箱)をインストールして行っていた計算が、Juliaでは標準機能で高速に実行できるのです。

優れた相互運用性(Python・C言語を呼び出せる)

「Juliaは便利そうだけど、Pythonで使っていたあの便利なライブラリ(道具箱)が使えないと困る…」 そう考える方も多いでしょう。ご安心ください。Juliaは「相互運用性」が非常に高く、Juliaのコードの中から、Pythonのライブラリ(PyCall)やC言語の関数を直接呼び出して使うことができます。

既存のPythonの資産を活かしつつ、処理が重たい部分だけをJuliaで高速化する、といった「いいとこ取り」が可能なのです。

並列処理・分散処理の容易さ

現代のデータ分析では、1台のコンピュータでは処理しきれないほどの巨大なデータを扱うことがあります。 Juliaは、こうした処理を「みんなで手分けして行う」(並列処理・分散処理)機能が、言語レベルで強力にサポートされています。

知っておくべきJuliaのデメリット・注意点

もちろん、Juliaは完璧な言語ではありません。 結論から言うと、新しい言語がゆえの「発展途上」な部分が、主なデメリットとなります。

Pythonに比べ、コミュニティとライブラリが発展途上

これが最大のデメリットかもしれません。 Pythonは、Web開発からデータ分析まで、世界中の開発者が膨大なライブラリ(道具箱)や学習記事(教科書)を生み出し、巨大なコミュニティ(仲間)が存在します。

それに比べると、Juliaはまだ新しい言語です。

  • ライブラリ(道具箱): データ分析分野は充実してきましたが、Web開発など分野によってはPythonに遠く及びません。
  • 学習リソース(教科書): 日本語の情報や、体系的に学べる書籍は、Pythonに比べるとまだ少ないのが現状です。
  • コミュニティ(仲間): 「エラーで詰まった!」という時に、日本語で検索しても解決策が見つかりにくい場合があります。

独自の概念(多重ディスパッチ等)による学習コスト

Juliaは「書きやすい」言語ですが、そのポテンシャル(特に速さ)を最大限に引き出すためには、「多重ディスパッチ」といったJulia独自の強力な仕組みを理解する必要があります。 「Python風に書く」だけなら簡単ですが、「Juliaらしく書く」には、少し学習が必要です。

初回実行時のわずかな遅延

メリットで紹介した「JITコンパイラ」(まるごと翻訳)の特性上、関数やライブラリを「最初に呼び出す時」だけ、翻訳のための時間がかかります。 (これは「Time-to-first-plot(最初のグラフ描画までの時間)」問題として知られています) 一度翻訳してしまえば2回目以降は超高速ですが、ちょっとしたスクリプトをサッと動かしたい時には、この初回の遅延が気になるかもしれません。

【徹底比較】JuliaとPython、データ分析で使うなら?

では、結局のところ、データ分析を学ぶならどちらが良いのでしょうか? 結論は、「すべてJuliaが優れている」わけではなく、「得意なことが違う」ので、あなたの目的や状況に応じた「使い分け(適材適所)」が大切です。

両者を3つのポイントで比較してみましょう。

実行速度

勝者:Julia (※ただし条件によります)

何も工夫しない「素」のコード同士で比較すれば、特にループ処理や大規模な数値計算において、JuliaはPython(C言語で書かれたNumPyなどを除く)を圧倒します。 Pythonでも「Numba」などのライブラリを使えば高速化できますが、Juliaは標準でその速さを持っているのが強みです。

汎用性(できることの広さ)

勝者:Python

Pythonは、データ分析やAIだけでなく、Webアプリケーション開発(InstagramやYouTubeもPython)、業務自動化、IoTなど、文字通り「何でもできる」汎用性の高さが魅力です。 Juliaは、現状ではデータ分析や科学技術計算がメインの戦場です。

エコシステム(ライブラリと学習リソース)

勝者:Python(圧勝)

デメリットでも触れた通り、ライブラリの数、学習リソース(書籍、Web記事)、コミュニティの規模、そして「求人数」においても、現状はPythonが圧倒的に優位です。

【結論】今から学ぶならどちら?

あなたの状況に合わせて、おすすめは変わります。

  • これからデータ分析を学びたい方 まずはPythonから始めることを強く推奨します。 学習リソースが豊富で挫折しにくく、データ分析の「考え方」を学ぶ上で最適です。分析屋でも、まずはPythonやSQLから学ぶ研修が充実しています。
  • すでにPythonを使っていて、速度に不満がある方 Juliaは、あなたの強力な武器になります。 Pythonで学んだ分析の知識を活かしつつ、Pythonでは時間がかかりすぎて諦めていたような、より複雑で大規模な処理に挑戦できます。

Juliaの将来性と代表的な活用事例

JuliaはPythonを「置き換える」ものではなく、「Pythonでは対応しきれない、より高いパフォーマンスが求められる領域」で活躍する、強力な選択肢として確実に成長しています。

アカデミックな(大学や研究機関の)世界で生まれた言語ですが、その「速さ」と「書きやすさ」が評価され、産業界でも採用が始まっています。

Juliaで開発された代表的なプロジェクト

  • Celeste.jl(天文学): Juliaの象徴的な成功例です。宇宙望遠鏡が撮影した膨大な天体カタログ(ペタバイト級=1000テラバイト級のデータ)の解析にJuliaが使われ、従来のC++で書かれたコードよりも大幅なパフォーマンス向上を達成しました。
  • Flux.jl(機械学習): JuliaでAI(機械学習・深層学習)モデルを構築するためのライブラリです。PythonのTensorFlowやPyTorchのように、柔軟なモデル開発が可能です。
  • JuMP.jl(数理最適化): 「どのルートが最短か?」「どうすればコストが最小になるか?」といった複雑な「最適化問題」を解くためのライブラリとして、金融や物流、エネルギー業界などで広く使われています。

金融、製薬、AI分野での活用

「速度=価値」に直結する分野での活用が進んでいます。

  • 金融: 1秒を争うアルゴリズム取引(高速トレーディング)
  • 製薬: 複雑な分子構造のシミュレーション(創薬)
  • AI・ロボティクス: 自動運転車やロボットのリアルタイム制御

Juliaの特徴を「ビジネス課題の解決」にどう活かすか

ここまでJuliaの技術的な特徴を見てきましたが、私たち「分析屋」のプロフェッショナルとして最も重要だと考えているのは、「その技術を使って、顧客のビジネス課題をどう解決するか」という視点です。

技術(Julia)の「速さ」は、ビジネスの「試行錯誤(PDCA)の速さ」

もし、顧客の膨大なデータを分析するのに、Pythonでは丸1日(10時間)かかっていたとします。 これでは、顧客に「言われた通りの集計」を1回実行するだけで精一杯です。

もし、Juliaを使ってこの処理が10分に短縮されたら、何が起こるでしょうか? あなたは、空いた9時間50分を使って、

  • 「Aの条件で絞り込んだらどうなる?」
  • 「Bのデータと掛け合わせたら、新しい発見があるのでは?」
  • 「Cという新しいAIモデルを試してみよう」 と、**何十回も「試行錯誤(=仮説検証)」**ができるようになります。

この試行錯誤の回数こそが、分析の質、ひいては**顧客への「提案の質」**に直結します。 Juliaの「速さ」は、単なる技術的な自己満足ではなく、ビジネスのPDCAを高速化し、より本質的な課題解決に時間を使うための強力な武器なのです。

「新しい言語の学習」は「データ活用の本質」を掴む機会

「文系出身で、プログラミングなんて全く分からない…」 「JuliaやPythonは、難しそうで自分には縁がない」

そう思っていませんか? JuliaやPythonのような言語を学ぶことは、単に「コードが書けるようになる」ことだけが目的ではありません。 それは、**「データ活用の本質的な思考プロセス」**を学ぶことです。

  • どうやってデータを集め、処理するか?(システム・エンジニアリング的視点)
  • どうやってデータを分析し、傾向を掴むか?(統計・データサイエンス的視点)
  • どうやって分析結果から課題を特定し、解決策を提案するか?(ビジネス・コンサルティング的視点)

「経験と勘」に頼るのではなく、データという客観的な事実に基づいて論理的に考える。 私たち分析屋では、この「データ活用の本質」を学ぶことこそが最も重要だと考えており、プログラミング未経験の方でも一から学べる研修制度(「おもてなしの精神」に基づく教育)を整えています。

まとめ

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • Juliaは「速さ」と「書きやすさ」を両立した、データ分析・科学技術計算に特化した言語です。
  • メリットは、JITコンパイラによる「速さ」、Pythonに似た「書きやすさ」、そして「他の言語との連携(相互運用性)」です。
  • デメリットは、新しい言語ゆえの「エコシステム(道具や仲間)の少なさ」や「日本語情報の不足」です。
  • Pythonとの比較では、「速度」でJuliaが勝ち、「汎用性」と「エコシステム」でPythonが圧勝します。「適材適所」が重要です。
  • 将来性は高く、特にパフォーマンスが求められる金融、製薬、AI分野での活用が進んでいます。

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