
「R言語」という言葉を聞いたことはありますか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの活用が当たり前になった今、「データを読み解き、ビジネスに活かすスキル」は、職種を問わずますます重要になっています。
R言語は、まさにそのデータ活用の世界で使われる、プロ向けの強力な道具(プログラミング言語)の一つです。
「プログラミングは初めてだけど大丈夫かな?」 「よく聞くPythonとは何が違うの?」
この記事では、そんなあなたの疑問に一つひとつお答えしていきます。ビジネスでの具体的な活用法から、Pythonとの違い、学習方法まで、この記事一つでR言語の全体像がわかるように解説します。
読み終える頃には、あなたがR言語を学ぶべきか、その答えがきっと見つかるはずです。
R言語とは?データ分析の世界を拓くプログラミング言語
結論から言うと、R言語とは「データ分析、特に“統計”の力を使ってデータから意味を見つけ出す」ために生まれた、専門性の高いプログラミング言語です。
「統計解析」のために生まれた専門家
R言語は、もともと統計学の研究者たちが「もっと手軽に、かつ高度な統計分析がしたい」という目的で作った言語です。そのため、他の言語と比べて、特に統計解析や、分析結果をグラフなどで分かりやすく表現する(可視化する)機能が非常に充実しています。
言わば、データ分析界の「専門家」のような存在です。
R言語を支える「パッケージ(ライブラリ)」の世界
R言語の最大の特徴は、「パッケージ」と呼ばれる拡張機能が世界中で開発され、共有されていることです。
パッケージとは、スマートフォンの「アプリ」のようなものだと考えてください。基本的な機能しか持たないスマホでも、カメラアプリや地図アプリを入れることで、できることが一気に増えますよね。R言語も同じで、必要なパッケージを追加(インストール)することで、最新の分析手法や、複雑なグラフ作成などを、まるで専門家が作った道具を借りてくるかのように、手軽に利用できるのです。
特に、これからR言語を学ぶなら絶対に知っておきたいのがtidyverseというパッケージ群です。
tidyverseとは?
データ分析の一連の流れ(データの読み込み→加工→グラフ作成→分析)を、統一された分かりやすいルールで、流れるように行えるようにしてくれる、現代のR言語の中核とも言えるパッケージの集まりです。
dplyr
tidyverseに含まれるパッケージの一つで、Excelのフィルターや並び替えのように、データを直感的に扱うことができます。
ggplot2
こちらもtidyverseに含まれるパッケージで、美しいグラフを柔軟に作成することに非常に長けています 。この記事の後半で、具体的なコード例も見ていきましょう。
R言語でできること【プロの活用事例とコード例】
R言語を使えば、ビジネスの現場でデータに基づいた意思決定を強力にサポートできます。ここでは、具体的な活用シーンをいくつか見ていきましょう。
統計解析
これがR言語の最も得意な分野です 。例えば、顧客アンケートの結果から「顧客満足度に本当に影響を与えている要因は何か?」を統計的に明らかにしたり、新商品のキャンペーンが売上にどれだけ貢献したかを正確に測定したりできます。
経験や勘だけに頼らず、データという客観的な根拠を持ってビジネスの課題に答えることができます。
機械学習モデルの構築
AI技術の中核である「機械学習」もR言語で実行できます。例えば、過去の販売実績データをもとに、将来の売上を予測するモデルを作ったり、顧客の行動履歴から「次にこの商品を買ってくれそうな人」を予測したりすることが可能です。
データの可視化(グラフ作成)
分析結果がどれだけ正しくても、それが相手に伝わらなければ意味がありません。R言語(特にggplot2パッケージ)は、複雑な分析結果を、誰にでも直感的に理解できる美しいグラフに落とし込むのが非常に得意です 。
たった数行のコードで、以下のようなグラフを柔軟に作成できます。
ggplot2を使ったグラフ作成のコード例
アヤメという有名な花のデータを使い、種類ごとに花びらの長さと幅の関係をグラフ化する例です
# ggplot2パッケージを使えるように読み込む library(ggplot2) # グラフの作成 # 使うデータ、x軸、y軸、色分けのルールを決める ggplot(iris, aes(x = Sepal.Length, y = Sepal.Width, color = Species)) + geom_point() + # 点グラフを描く命令 # グラフのタイトルや軸の名前をつける labs(title = “アヤメの花の萼片の長さと幅の関係”, x = “萼片の長さ”, y = “萼片の幅”) |

setosa
、versicolor
、virginica
)それぞれについて、「萼片の長さ(x軸)」と「萼片の幅(y軸)」の関係を点で示した散布図【徹底比較】R言語とPython、どちらを学ぶべき?
データ分析を学ぼうとすると、必ず出てくるのが「RとPython、どっちがいいの?」という疑問です。 結論は、「どちらが優れているか」ではなく、「あなたの目的に合っているのはどちらか」で選ぶべきです。
一目でわかる比較表
R言語 | Python | |
---|---|---|
得意なこと | 統計解析、データ可視化 | 機械学習、システム開発 |
汎用性 | △(分析業務に特化) | ◎(Webアプリ開発なども可能) |
使われるシーン | 学術・研究、データ分析部門 | IT・Web業界、AI開発部門 |
学習しやすさ | 統計の知識があるとスムーズ | プログラミング初学者でも直感的 |
求人数 | やや少なめ | 非常に多い |
目的別のおすすめ
R言語がおすすめな人
データ分析のスペシャリストを目指す人。統計モデルを使ってデータの本質を探求したり、分析結果を美しいグラフで表現したりすることに重きを置くなら、R言語は最高の相棒になります。
Pythonがおすすめな人
分析もできるITエンジニアを目指す人。分析だけでなく、その結果をWebサービスに組み込んだり、幅広いシステム開発に関わりたいと考えているなら、汎用性の高いPythonがおすすめです。
コードで比較!同じ処理をRとPythonで書くと?
「CSVファイルを読み込んで、簡単なグラフを描く」という同じ処理を、それぞれの言語で書いてみましょう。コードの雰囲気の違いを感じてみてください。
Rの記述例 (tidyverseを使用)
library(tidyverse) read_csv(“data.csv”) %>% ggplot(aes(x = column1, y = column2)) + geom_point() |
Pythonの記述例 (pandas, matplotlibを使用)
import pandas as pd import matplotlib.pyplot as plt data = pd.read_csv(“data.csv”) plt.scatter(data[‘column1’], data[‘column2’]) plt.show() |
記述スタイルの違いが意味すること
コードの量の違いは、それぞれの言語が持つ「思想」の違いから来ています。これが、実務での使い勝手や、できることの幅に影響を与えます。
R言語は「データ分析の専門家のための工房」
Rのコード(特にtidyverse)は、分析の思考プロセスそのものを表現するように作られています。「このデータを取ってきて、次にこう絞り込んで、最後にグラフにする」という一連の流れを、人間が考える順番のまま直感的に記述できます。
>結果として変わること
● 思考を止めない分析:データを見ながら「次は何をしようか」と試行錯誤する探索的なデータ分析が非常にスムーズです。
● 分析の再現性と共有のしやすさ:コード自体が分析の「手順書」になるため、他の人が見ても何をやっているかが分かりやすく、結果の共有が容易です。
● 専門性の高い統計解析:Rは学術界で生まれた背景から、最新の専門的な統計手法がパッケージとして誰よりも早く提供される傾向があります。
Pythonは「何でも作れる万能な工場」
Pythonのコードは、汎用的なプログラミング言語のルールに則っています。データも、グラフも、すべて「オブジェクト」というモノとして扱い、それを一つひとつ操作していきます。
>結果として変わること
● 分析をシステムの一部に組み込みやすい:分析して終わり、ではなく、その分析ロジックをWebアプリに組み込んだり、定期的に自動実行するシステムを作ったりと、分析を「サービス」や「プロダクト」に発展させるのが得意です。
● 幅広い分野への応用:データ分析で学んだ書き方が、AI開発、Webサイト構築、業務自動化など、他の分野でもそのまま活かせます。
● 最新のAI・深層学習との連携:TensorFlowやPyTorchといった最先端の深層学習(ディープラーニング)ライブラリはPythonを中心に開発されており、この分野ではPythonが圧倒的に有利です。
基本的には、ほとんどのデータ分析タスクはどちらの言語でも実現可能です。しかし、分析のプロセスを重視するならR、分析結果をシステムに組み込むことまで見据えるならPython、という思想の違いが、あなたの仕事のスタイルを大きく左右するのです。
RとPython、両方学ぶ意味はある?
「結局、片方だけじゃダメなの?」と思うかもしれません。もちろん、どちらか一方を極めるだけでも立派な専門家になれます。しかし、両方を扱えるようになると、あなたの市場価値は飛躍的に高まります。
● 「適材適所」で最高の道具を選べる:探索的な分析はRで素早く行い、本番のシステム開発はPythonで行う、といったように、課題に応じて最適な言語を使い分けることができます。
● チームでの協業がスムーズになる:現場ではRを使うチーム、Pythonを使うチームが混在しています。両方を知っていれば、どんなプロジェクトにも柔軟に対応でき、重宝される存在になります。
● キャリアの選択肢が広がる:「R言語必須」の求人にも、「Python必須」の求人にも応募できるようになり、活躍の場が大きく広がります。
まずはどちらか一方、あなたの目的に合った言語から深く学び始め、余力が出てきたらもう一方にも触れてみる、というのが理想的なステップアップと言えるでしょう。
【SE向け】キャリアチェンジにおける言語の選び方
もしあなたが現役のエンジニアで、データ分析領域へのキャリアチェンジを考えているなら、「システム開発の経験」は大きな強みになります。
その上で、
● 分析モデルをシステムに組み込む「機械学習エンジニア」を目指すなら、Pythonが有利です。
● 分析そのものの専門性を高め、データからビジネス課題を解決する「データアナリスト」を目指すなら、R言語は非常に強力な武器になります。
Pythonでできることについて、より詳しくはこちらの記事もぜひご覧ください。
R言語の学習ロードマップ
R言語の学習は、正しいステップで進めれば決して難しくありません。ここでは、未経験から始めるための最短ロードマップをご紹介します。
3ステップで学ぶR言語
Step1:環境構築
まずはR言語本体と、**RStudio**という非常に高機能な開発ツール(無料)をPCにインストールしましょう。「RStudio インストール」で検索すれば、たくさんの解説記事が見つかります。
Step2:基本文法の習得
変数(データを入れる箱)、ベクトル(数値の列)、データフレーム(Excelのような表)といった、R言語の基本的なデータの扱い方を学びます。
Step3:tidyverseを使ったデータ分析入門
基本が分かったら、いよいよtidyverseパッケージを使って、実際のデータを加工したり、ggplot2でグラフを作成したりしてみましょう。実践を通じて学ぶのが一番の近道です。
R言語を活かせる仕事と「分析屋」の働き方
R言語を身につけると、どのようなキャリアが拓けるのでしょうか。
R言語が活かせる職種
● データアナリスト
● データサイエンティスト
● リサーチャー
● 機械学習エンジニア
【コラム】「R言語はオワコン」は本当?
「Pythonの人気が高いから、R言語はもう古い(オワコン)」という声を聞くことがあるかもしれません。しかし、それは誤解です。
特に、アカデミックな研究分野や、製薬業界の治験データ分析、金融機関のリスク分析など、高度な統計解析が求められる専門領域では、R言語は今もなお第一線で活躍しています。PythonとRは、競合するのではなく、それぞれの得意分野で共存していく関係なのです。
分析屋で実現する「データを価値に変える」働き方
私たち分析屋では、R言語やPythonといったツールは、あくまで「顧客のビジネスを成功に導くための道具」だと考えています。
言われた通りに分析するだけの仕事ではありません。自らデータと向き合い、課題を発見し、解決策を提案する。R言語のスキルを武器に、そんな「データを価値に変える」働き方をしたいと考えるなら、分析屋はあなたにとって最高の環境です。
まとめ
今回は、データ分析言語であるR言語について、その基本からPythonとの違い、具体的なキャリアまでを解説しました。
● R言語は、統計解析とデータ可視化に特化した専門家
● Pythonとは優劣ではなく、目的によって使い分ける
● Rを学ぶことは、データからビジネス価値を生み出す力を養うこと
この記事が、あなたの新たなキャリアへの第一歩を踏み出すきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。
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