・自動車の運転支援システムのデータ分析
・食品メーカーの情報システムの情シス
・そして現在は、人口規模の小さな町のDX支援
岩川のキャリアは、かなり幅広い。
今の仕事では、役場の紙申請を電子化することもあれば、住民にスマートフォンの使い方を教えることもある。
町議会の答弁作成にAIを活用できないか考えたり、電子入札の仕組みを一から調べたり。
本人いわく、
「ITのことなら何でも屋さんみたいな感じです」
一方で、岩川自身は意外にも、
「自分をエンジニアだという感覚は、あまりない」
という。
技術だけを極めたいわけではない。
目の前の人が何に困っているのかを知って、必要なら知らない分野も一から調べて、少し先回りして返す。
一度分析屋を離れた経験も含めて、岩川がたどり着いたのは、そんな“人に近いIT”だった。
数字の羅列から、「何が起きているのか」を想像するのが面白かった。
分析屋へ入る前は、自動車関係の仕事だったんですよね。
そうですね。
地元が愛知なので、新卒では自動車会社から仕事を受けている会社に入りました。
最初は運転支援システムの開発進行管理、その後は車載ソフトのテストなどをやっていました。
ソフトをテストするときは、マイコンから出てくる信号の値を見て、
「ちゃんと意図した通りに動いているか」
を確認するんです。
データだけ見ると、本当に数字の羅列なんですよ。
でも、その数字を読み解いていくと、
「今、車の中でこういうことが起きているんだな」
と想像できる。
それが結構面白かったんです。
そこからいろいろ調べているうちに、「データ分析」という仕事があることを知りました。
それで未経験からデータ分析へ?
はい。
地元では未経験から入れる会社がそれほど多くなくて、もともと関東で働いてみたい気持ちもあったので、関東まで広げて探しました。
分析屋を選んだ理由の一つは、いろいろな業界の仕事ができそうだったことです。
当時は、データ分析の求人というと事業会社の一部門が多かった印象があったので。
分析屋なら、業界を限定せずいろいろ経験できそうだなと思いました。
もう一つ印象に残っているのが、面接です。
2019年だったので、採用面接は対面が普通だったんですけど、
「リモートでも大丈夫ですよ」
と言ってもらえて。
当時としてはかなり珍しかったので、
「結構柔軟な会社なんだな」
と思ったのを覚えています。
「安定」を求めて会社を出た。でも、それだけでは仕事は続かなかった。
岩川さんは、一度分析屋を退職していますよね。
そうですね。
3〜4年くらい働いたころに、少しキャリアに迷いが出てきました。
データやITの世界って、変化がすごく速いじゃないですか。
技術も仕事もどんどん変わる。
当時は、
「もう少し時代の変化に左右されにくい立場に行った方がいいんじゃないか」
という不安があったんです。
それで一度分析屋を離れて、食品メーカーの情報システム部門へ転職しました。
社員が使うパソコンやスマートフォン、イントラネット、工場内の通信インフラなどを管理する仕事です。
そこから半年ほどで分析屋へ戻ることになったのですね。
はい。
仕事の内容というより、自分と会社の雰囲気との相性が大きかったですね。
食品を扱う会社なので、安定して製品を届ける責任も大きい。
厳しく仕事を見る必要がある文化だったんだと思います。
ただ、自分にはもう少し違うコミュニケーションの取り方の方が合っていた。
そこで初めて、
「仕事を長く続けるうえで、人との関わり方って思っていた以上に重要なんだな」
と感じました。
分析屋を辞めたあとも連絡を取っている人たちがいて、相談したら、
「戻ってきたらいいじゃん」
と言ってもらえて。
それで戻ることになりました。
最初に会社を出たときは「時代に左右されない仕事」を求めていたわけですよね。
そうなんです。
もちろん、業界や会社の安定性も大事だと思います。
でも外に出てみて、
そのもっと手前に、人との関わり方がある
と気づきました。
いくら仕事そのものが安定していても、毎日そこで働き続けることが難しかったら意味がない。
自分にとっては、そちらの方が優先順位が高かったんだと思います。
分析屋って、社員同士の距離感も結構独特なんですよね。
仲はいいけど、ベタベタしているわけではない。
必要なときには手を貸すし、プライベートで集まる人もいる。
その距離感が、自分にはちょうどいいんだと思います。
町役場からスマホ相談まで。「ITなら何でも」が今の仕事。
現在はかなり珍しい案件に入っていますよね。
そうですね。
今は、人口規模が比較的小さく、高齢者の割合も高い自治体で、町全体のデジタル化を支援しています。
役場のDXを担当しながら、現地で働いているメンバーのフォローもしています。
一番分かりやすいところだと、
今まで紙で申請・計算していたものを電子化する。
そういう役場の業務改善ですね。
ただ、仕事はそれだけじゃないです。
週に一度「デジタル相談会」を開いていて、
「スマホの使い方が分からない」
「メールの設定を教えてほしい」
みたいな住民の相談に乗ることもあります。
場合によっては、ネット回線がつながらないという相談を受けて、家や事業所まで行くこともあります。
本当に、
「IT系なら何でも屋さん」
みたいな感じですね(笑)。
町のイベントでは、駐車場の場所や空き状況が分かるWebページをつくる話が出たり。
最近では、町議会の一般質問に対する答弁作成をAIで効率化できないか、という相談も来ています。
ただ、
「じゃあAIを入れれば終わり」
ではないんです。
実際に使う課長職の方々でも、AIを使ったことがある人、ほとんど触ったことがない人と差がある。
なのでまず、
「どうすればAIに触れてもらえるか」
という研修から考えています。
データ分析会社の仕事として想像すると、かなり意外です。
僕もそう思います(笑)。
今まで普通に生活していたら、町議会の答弁をどうつくるかなんて考えなかったと思うんです。
電子入札の支援を頼まれたときも、
「そもそも入札って何だっけ?」
から始まりました。
説明書を読み込んで、仕組みを理解して、
「この設定なら使えるんじゃないですか」
と一緒に考える。
知らなかった世界を一から知れるのは、すごく新鮮ですね。
入社したころに惹かれた、
「いろいろな業界の仕事ができそう」
という分析屋の特徴が、今になって一番振り切れた形で実現している気がします。

「エンジニアっぽくない」が、むしろ仕事になっていた。
分析屋に入って成長したと思うところはありますか?
技術面では、SQLなどは分析屋に入ってから本格的に触るようになったので、そこはもちろんあります。
でも、それ以上に大きいのは、
相手がどう思うかを考えて、先回りすること
かもしれません。
分析屋には、
「相手はたぶんこう考えているから、ここまで返した方がいいんじゃない?」
と考えて動く人が周りに結構いるんです。
そういう人を見ているうちに、
「仕事って、そこまで考えるものなんだ」
と自然に身についた部分はあると思います。
岩川さん自身にも、「伝え方」という強みがありますよね。
そこは、後から周りに気づいてもらったところですね。
2019年に分析屋へ入ったとき、一緒に研修を受けていた方がIT未経験だったんです。
私は多少経験があったので、分からないところを教えることがありました。
でも、専門用語をそのまま使っても絶対伝わらないじゃないですか。
ExcelやITの考え方を、
「別のもので例えると、こういうことですよ」
と置き換えて説明したりしていました。
それを当時の中途研修の責任者が見ていたらしくて。
後から、中途社員向けの研修チームにも声をかけてもらいました。
自分では、
「説明が得意です」
と思っていたわけではないんです。
周りの人に見つけてもらった強みですね。
「自分はエンジニアだ」という感覚もあまりないそうですね。
ないですね(笑)。
そんなに胸を張って「エンジニアです」と言っていいのかな、と思うタイプです。
でも分析屋には、技術一辺倒の人だけが集まっている感じはあまりしないんですよね。
もちろん技術力がすごい人はいっぱいいます。
でも同時に、人と話すのがうまい人もいるし、相手の事情を考えて動ける人もいる。
世間で想像されるような、
「技術だけをひたすら突き詰めるエンジニア」
ばかりではないと思います。
今の自分の仕事を考えても、そうですよね。
スマホの相談に乗ることもあれば、町役場とAI活用を考えることもある。
必要なのは技術だけじゃなくて、
目の前の人が何に困っているのかを理解すること。
自分には、そっちの方がしっくりきています。
10を頼まれたら、12、13、14くらい返したい。
分析屋だからできたと思う経験はありますか?
今の自治体の案件に入れたことは、その一つだと思います。
この仕事に興味を持った段階では、まだ別の案件に入っていたんです。
でも、
「やってみたいです」
と周りに話していました。
すると、前任の方や当時の現場のリーダーなどが動いてくれて。
当時の案件を抜けることも含めて調整してもらって、実際に今の仕事に移ることができました。
言ったからすぐ何でも叶う、ということではないと思います。
でも、本人がやりたいと言ったことを、
「どうすれば実現できるだろう」
と一緒に考えてくれる人がいる。
そこは分析屋らしいと思います。
社内でも、人をつなぐ役割をかなりやっていますよね。赤羽会も岩川さんですよね?
そうですね(笑)。
分析屋に戻ってきたころ、赤羽の近くに住むようになったんです。
分析屋にも埼玉方面に住んでいる人が増えていたんですけど、当時の全社イベントは藤沢や横浜が中心だったので、
「こっち側でも集まれる場所をつくればいいんじゃないか」
と思って始めました。
今、チャットには39人くらいいます。
立派な理由みたいに聞こえますけど、実際は、
僕が一人で赤羽に飲みに行くのが寂しかった
というのも大きいです(笑)。
でも、そこで知り合った人同士が、その後一緒に社内の仕事をやるようになったこともあって。
仕事じゃないところから始まった関係が、仕事につながる。
そういうことが自然に起こるのも面白いですね。
これから、どんな仕事をしていきたいですか?
今の行政の仕事はまだ始めたばかりなので、もう少しいろいろ経験したいです。
マネジメントも少しずつやらせてもらっているので、そこももっと経験したい。
あとは、自分の中でずっと思っているのが、
求められたものが10だったら、10を返すだけではちょっとつまらない
ということです。
10と言われたら、
「これもあった方がいいんじゃないですか」
と、12とか13とか14くらいにして返せる人になりたい。
すごい技術を持った人になる、というよりも。
相手がまだ言葉にしていないところまで考えて、
「そこまでやってくれたんだ」
と思ってもらえる仕事ができるようになりたいです。
最後に、どんな人が分析屋に向いていると思いますか?
人との関わり方を大切にできる人ですね。
社内でも、社外でも。
入社時点ですべてのITスキルが揃っている必要はないと思っています。
分析屋の中を見渡せば、それぞれ違う分野に詳しい人がいるので。
自分にないものは、その人たちから教えてもらえばいい。
そのためにも、人とちゃんと関係をつくって、聞けることはすごく大事だと思います。
もし今、
「ITの仕事は嫌いじゃない。でも、人間関係でちょっと疲れたな」
と思っている人がいるなら、一度話を聞きに来てもらってもいいんじゃないでしょうか。
僕自身、一度外へ出たからこそ、
どんな仕事をするかと同じくらい、誰とどう働くかは大事なんだ
と分かりました。
そして今は、町の人たちと話しながら、
「ITで何ができるだろう」
を毎日考えています。
昔想像していた“エンジニア”とは少し違うかもしれない。
でも、自分にはこのくらい人に近い方が、面白いですね。